本当に「絶望」した時に人は自殺しようとする。
山田悠介の原作はこれだけを言いたくて、これを書いたのだろうか?
逆説的に言うと、人は希望を持ち続ける限り生きていこうとする。
雨の青山円形劇場は10代から20代の女性で溢れかえっていた。
普段の、演劇の観客たちとは明らかに客層が違う。
それはそれでいいことなのであるが、逆に驚く。
こんなに雰囲気の似通った女性たちが一同に集まる場所があるんだ!と思った。
「永山たかし」という役者はそんなに人気があるのか?全く知らなかった。
「テニスの王子様」というミュージカルに出演しているらしい。
このミュージカルが、今、女子中高生の間で圧倒的な人気があるという
噂は聞いたことがあるのだが。
この舞台を見に行ったのには僕なりの理由があった。
脚本・演出が岡本貴也だったから。
彼は、先日見た舞台「舞台・阪神淡路大震災」の作・演出を手がけていた。
圧倒された舞台だった。事実の強さが、目の前で行なわれていることと重なる。
人が生きていくために大切なこと。
人と人とが社会を形成して生きていくということが
これほどまでに明快に伝わってきた舞台を、経験したことがなかった。
その彼が演出する。企画・制作はデジタルハリウッド・エンタテイメント。
女子高校生役の肘井美佳が可愛い。
伊東美咲を若くしたという感じ?
彼らの若くて未熟ながらの熱演が伝わってくる。
岡本貴也の効果音の使い方は「阪神淡路大震災」でも十分伝わってきたが、
その上手さが確信に変わった。
そして人が次々と、自殺していくのだが、その理由は様々である。
その人なりの絶望を感じて自ら命を絶つ。
その理由が幸せの絶頂にあるときでさえも、その理由になる人がいる。
テーマは深く、思い。
しかしながら、1時間40分の舞台で、これらのことを十分描ききれる筈がない。
何かを選んで、何かを捨てる勇気を持つことが必要だったのではないだろうか?
ラストシーンで「永山たかし」が慟哭する場面で、
女性たちからのすすり泣きが聞こえてくる。それもかなりの割合で。
この国は、東京は、若者たちは???
ということに、逆に思いを馳せた舞台だった。