プロデューサー:綿貫凛、作:大竹野正典、演出:瀬戸山美咲。
2002年に発覚した久留米市保険金殺人事件を下敷きにした舞台。
看護学校の同僚たちが保険金目当てに自分の夫を殺し、
その保険金を受け取るという事件だった。
3000万少しの保険金を2度受け取ったらしい。
本作でも犯人だった元看護士と同じ名前で登場する
ヨシダ(松永玲子)、イシイ(高橋由美子)、ツツミ(松本紀保)、そしてイケガミ(安藤玉恵)。
この芸達者な4人を良くキャスティングできた。
この大竹野の戯曲は第11回OMS戯曲賞の佳作に選ばれている。
大阪に扇町ミュージアムスクエアという演劇を上演するのに熱心な劇場があり、
そこが主宰した戯曲賞である。
あの劇場があったことで大阪をはじめとする関西の演劇人がたくさん育ったことは事実である。
劇場が人を育てる。大竹野は大阪で活動しており本作も全編大阪弁に書き直されている。
松永玲子は大阪出身だけにイントネーションが完璧。
私も関西出身なので関西弁のイントネーションの違いが気になってしまう。
あ、アクセントが違う!などがとても気になる。それ以外はとても興味深い内容だった。
お金と人にまつわるドロドロとした物語。
桐野夏生の「OUT」にも似た女たちだけの策略。
ヨシダがその首謀者だったらしいのだが、ここでは各看護士たちが同列に描かれる。
みんなどうしようもない夫を持った人たちの苦悩を
女仲間として助け合うことで生きている。
夫がいなくなった方が自分のためにも子供のためにもいいのだ!
と考え方をシフトしていく過程がここで描かれる。
人間は、マインドコントロールされる。
連合赤軍の事件とも似たような人間関係の構造がここに見えてくる。
最近だと尼崎の連続監禁殺人事件なども。
人として、行ってはいけないことが、正当化されてしまう。
その気持ちの変化が怖くもありリアリティもある。
企業の不祥事や組織での犯罪もこのような心の仕組みによって起こっているのではないだろうか?
松本紀保は治験コーディネーターをしている。
彼女は新薬を治験して患者を助けるということを行っている。
その他の看護師たちも職場では日々、人の命を助ける仕事をしている。
のにもかかわらず人の命を殺めることを行ってしまうという人間の多面性が描かれる。
聖マリア学院短期大学(現在の名前)に同時期に入った4人が起こした犯行である。
看護学校を出て病院に勤務し医師と患者と向き合うだけの日々という環境はある種の
大きな社会性などが失われていくのではないだろうか?
閉じられた世界が何か常識と違うことを起こす。
これは本作も、赤軍のリンチ事件も尼崎の監禁殺人事件も同様である。
上演時間1時間50分ほど、24日まで。