朝日新聞のあるコラムが僕の目にとまった。
「窓―論説委員から。」(2006年8月7日)
わが子を腕に抱いて、こちらをじっと見据える若い母親。
「あなたが生まれて私は戦士になった。護るべきもの。
それが私の手の中にある。」
会場に大きなおなかを抱えて来た妊婦は、
終始泣きながら見ていたという。
この記事を読んで、どうしても見たいと思った。
市ヶ谷で会社のプレゼンテーションを終え昼食がてら、神田小川町へ。
小川町駅のA5出口を出るとそこがオリンパスギャラリー。
隣はオリンパスのショウルームになっている。
会場は、お母さんとこれからお母さんになろうとする妊婦の人がほとんど。
平日の昼時だったのにもかかわらず混んでいた。
新聞記事の効果もあるのだろうか?
写真家の松永知恵美さんは、岐阜県でブライダルの写真を撮影しながら、
ライフワークとして妊婦さんと赤ちゃんを撮影しているらしい。
すでに250人を越えている。彼女は現在40歳。
7年前から始めたらしい。
そのころは写真店でカメラアシスタントをされていたそうだ。
当時33歳。
何歳から始めても遅くない、ということが実感として伝わってくる。
写真は全てモノクローム。
よくこんな写真がとれたなあと感心する。
妊婦さんから頭だけ出ている赤ちゃんの写真。
胎盤にへその緒でつながっている赤ちゃんの写真。などなど。
胎盤というものを初めて見た。
なるほど、生命製造器というのがわかるような気がする。
胎盤の表面には血管が浮き上がり
ここから赤ちゃんに様々なものが流れているということが良くわかった。
母体と赤ちゃんは一心同体ということを再認識する。
また、お父さんが、生まれてくる赤ちゃんの様子を伺って、
分娩室の戸口に耳をつけているシーンの写真も印象的だった。
僕は、子供がいないので良くはわからないが、
お父さんの心配そうな気持ちが強く伝わってきた。
この写真展の最大の特徴は、各写真に言葉が沿えられていること。
この言葉を読むことでさらにグッとくる。
生まれてくる子供たちに対して、新しい生命に対して
こころから感謝していることがストレートに伝わってくる。
何のてらいも、気負いもなく、ストレートであることが
ココロの奥底をギュッギュッと踏みしだくのだ。