作:ウィリアム・ギブソン、翻訳:常田景子、演出:森新太郎
サリバン先生を高畑充希がヘレン・ケラーを鈴木梨央が演じた。
鈴木梨央はこの舞台が初舞台!ヘレン・ケラーの役なのでほとんどセリフはない!
その代わり身体の動きだけで様々な感情を表現しなければいけない。
高畑充希はこのヘレン・ケラーの役を過去に二回演じている。
そして満を持して今回サリバン先生の役に挑戦した。
安定した芝居とコミカルな感覚をそもそも持っているので見ていると舞台に引き込まれ、
あっという間に時間が過ぎて行く。そしてやはり身体能力が高い。
機敏な動きを見ていると感心する。しかも歌もうまい。
子どもの頃ミュージカルを見て、俳優になりたいと思い立った高畑充希。
それにむけて着々と準備をし彼女は夢を実現させた。
まるで野球選手のイチローのように子どもの頃からの夢を実現させている。
しかも俳優は現役で出来る時間が長い。
これから彼女はどんな女優になっていくのかとても楽しみ。
私が最初に見た「奇跡の人」は青山劇場での公演だった。
サリバン先生は大竹しのぶ、ヘレン・ケラーは鈴木杏だった。
長塚圭史がケラー家の長男の役を演じていたのが印象に残っている。
この時もぶっとんだ!
ここまで激しく世代を超えた女優二人がある種の身体を酷使したバトルを繰り広げるのか!
と今も鮮明にあの時の上演を覚えている。
本作も言葉を発しないヘレン・ケラーの鈴木梨央に
全身で相対していった高畑充希。
セリフがなく身体の動きだけでやりきった二人の10分以上にわたる芝居は圧巻だった。
劇場内はそのシーンが終わって暗転するとあふれんばかりの満場の拍手が鳴り響いた。
本作を見てサリバン先生は盲学校を出たばかりの若干20歳の新米教師だったことを知る。
新人教師が全力で向き合いついにヘレン・ケラーは言葉の存在とものには名前があることを理解する。
見終わって、
この作品は子育てと教育の物語である!と思った。
それはヘレン・ケラーのように障害を持った子供たちの問題だけではない!
どのように言葉を獲得するのか?意味を理解するのか?
そしてそれをどのようにして教えるのか?ということが描かれる。
教育に携わっていて一番感動するのは、教え子がグーンと成長する
段階というのがあるのだがそれを見たり感じたりできるとき。
ある種の人間の成長が実感として感じられるからだろう。
それは赤ちゃんが立つことが出来、歩きはじめ、
喋り始めるのを見るのと同じことなんだろう。
人間のもつ根源的な喜びが見えてくる。
本作ではそのハイライトが井戸水からとめどなく流れ出す水を両手に受けて
「ウウォーダ」とヘレン・ケラーが叫ぶところ!
勇気を持ってヘレンに立ち向かうサリバン高畑充希の強さも教育には必要だ!と実感させてくれる。
この日はお休みの日だったのでお子さん連れのお客様も多く、
是非親子でこのような演劇体験をして欲しい。
休憩2回挟んで約3時間15分!
熱量の高い舞台なのでどこで見てもいいかと思います。29日まで。