小川絵梨子が芸術監督になった新国立劇場に少年王者館がやってきた!
天野天街率いるこの劇団、名古屋を中心に活動していてもう何年になるのだろう!
東京で上演されるのは大抵がスズナリと決まっていた。
スズナリの小さな小屋いっぱいに俳優たちがぎっしりとそのステージを埋め尽くし、
夕沈の振付を大音量の音楽に合わせて踊るのに圧倒された。
そして、その王者館がスケールアップした場所で予算もスケールアップし
天野さんの世界観を実現させた。
言うなれば少年王者館の過去の集大成でありすべての王者館のエッセンスが詰まっている公演でもある。
言葉遊びや、ある種のノスタルジーを感じさせる昭和的な世界、
女の子は真っ白なワンピースを着て、
男の子は白い開襟シャツに紺色のだぶっとした半ズボン、そして白い学生帽!
昭和初期の世界がそこにはあり、
来年60歳を迎える天野の親世代の子どもの頃の時代が蘇る。
決して天野の子どもの頃の話ではなく、天野の世代が30年前を懐かしがってあこがれた世界。
それは今の若者が1980年代にあこがれるのと同じような感覚?
しかし、同時に、そこには戦争があり、並行してその戦争のイメージが語られる。
デジタルを象徴する「1001」というタイトルの真逆を描くかのような世界。
アナログで身体の手触りを大切にするのが天野天街ワールド。
今の時代の対極にある世界を、優秀な機材とスタッフで再現する。
スズナリで絶対できなかった大きな美術セット、そして、複雑な照明、さらには音響!
そのタイミングが精緻に計算されており、俳優たちが
1秒よりも短い単位での時間軸に合わせて演じ声を出し踊る。
さらには天野が以前からやっていたプロジェクションの技術も目いっぱい使って、
究極の少年王者館が完成した!
寺十吾がアクセントの笑いを取る!
「わしゃかなわんよ!」というギャグの高勢実乗(1897-1947)へのオマージュ。
小川絵梨子が天野さんに「ほんと自由にやってください!」と言っていただろう風景が見えてくる。
少年王者館は過去に50作品ほどの公演があったらしいが、本作は初めて見る人も楽しめ、
彼らの魅力がすべて詰まったものとなった。
同じことの繰り返しも登場する。
「グキッツ」という効果音で笑いが起きる。
本当に小学低学年の少年がそのまま舞台になったかのような59歳の演出。
人は年齢では精神の若さは測れない!上演時間2時間15分。26日まで。