原作の漫画を読んだことがないので原作との比較は出来ない。
HPなどを見ると、登場するキャラクター設定は、
原作に限りなく近いのだろう。
髪型や着ているものはそっくりに作られている。
高田雅博監督の演出は自然で無理がない。
淡々としたなかに切々としたものが描かれていて、最後の方でグッと来る。
丁寧な造りのものは、見ている側も丁寧に見ることが最善の回答である。
はぐみ役の蒼井優の描き方に完全にハマる。
彼女の喋り方、間の取りかた、声のトーン。
これは僕のためにつくられたキャラクターか?と思わず唸ってしまう。
不思議ちゃんにいかないギリギリのラインで留める。
しかも、絵を描く創作のシーンの集中力は凄い。
その二面性にまた、参る。
淡々としているのに、ガラスの床を歩いているような
危なっかしい気分になってしまいスクリーンから目が離せなくなる。そんな映画だった。
それは、出演者、映像、音楽、などなどのバランスが
絶妙なところで保たれているのかもしれない。
片思いが交錯しないまま描かれる。
桜井翔→蒼井優→伊勢谷友介。関めぐみ→加瀬亮→西田尚美。
これらの想いがそれぞれ描かれる。思う人は、想いが届かない。
思われる人は「ありがとう。」としか言えない。
それが言葉になるときもあるし、言葉にできないときもある。
みんなが経験してきただろう恋愛のすれ違いを見て、僕たちは切なくなる。
それが原作を含めて、若い人たちに受けている最大の理由なのかもしれない。
その感覚は大人になってからも、同じである。
多分、44歳の僕が映画館で最も年齢が上だったように思う。
(以下、ネタバレ含む。)
関めぐみが酔っ払って、加瀬亮におんぶされるシーンがあるのだが、
背中越しに、彼女が「真山、好き。」「真山、好き。」「だーい好き。」と言うシーンがある。
このシーンが切ない。
堺雅人がいい味の先生を好演。
宮大工をやっている中村獅童がいい。
中村獅童が櫻井翔に声を掛けることによって、櫻井が救われるのだ。
ペットボトル1本と1枚の手ぬぐいによって。
この映画全体を通じての読後感は、切ないけど爽やか。
いまの時代の、あらためて貴重な青春映画のひとつだと言えるだろう。
公式HPより。