『ブックカバーチャレンジ』28( book cover challenge vol.28)
28冊目は高橋治の「絢爛たる影絵 小津安二郎」(@文春文庫)
発行は1985年。東京に就職をして仕事をするためにやってきたのが1985年。
当時は映画館あるいはTV放送で映画を見る事しかできなかった。
お金がない若者や映画ヲタクたちは
街中にある二番館・三番館と呼ばれる名画座に通って安い入場料で
二本立て、三本立ての映画を見るのが普通の時代だった。
学生時代、大阪や神戸・京都の名画座通いをしていた私は、
東京に出て来てもお休みの日になると東京の名画座巡りをしていた。
銀座の1丁目か2丁目あたりに「並木座」という名画座があった。
地下に降りていく劇場で何故か
劇場の真ん中あたりに大きな柱があった。
私が小津安二郎の映画を初めて見たのがその「並木座」だった。
この映画館は小津作品を良く上映していることを後になって知った。
独特の喋り方と真正面から同アングルに切りとられた
俳優が独特の間合いでセリフを喋る。
最初はなんじゃこれは?と違和感を持つのだが、
慣れてくるとそのリズムが心地よくなってくる。
昭和の時代の建物や衣装、調度品が好きなのもあって
何度も小津作品を見るようになった。
昭和30年前後の映画産業が花形だった時代。
その絶頂期に作られた日本映画の素晴らしさは半端ない。
そんな時に書店で本書を見つけ購入した。
小説のような体裁で小津監督とその周囲の人たちそして監督と一緒に仕事をする
女優たちのことなどについて書かれていた。
著者の高橋治は東大を卒業後松竹に1953年に入社し
小津組で「東京物語」の助監督を経験された。
その後、作家になられた。
これは作家になった高橋治が初期に書いたものである。
読むと当時の映画人の余裕というのか太っ腹というのかそんなことを感じる。
時間もお金も自由に使える余裕があり
それが創作に活かされる。
最も興行成績の良かったあの時代だから出来たこともあったのだろう。
その時代に最高の場所にいた人たちのアウトプットは
どの業界でも世に残る。80年代から90年代にかけての広告業界のように。
そういう余裕のある社会がアフターコロナで方法は変わるかもしれないが
もう一度実現できるかも知れない。
日本テレビがこれからのドラマ収録の指針を出した。
撮影は12時間以内休憩を2時間は取る!
このようなことで、日本の映像制作がようやく
普通の仕事として世界標準になっていくのかも知れません。
読書文化普及のため
◎毎日一冊の本の表紙をUP
#BookCoverChallenge