「病室」劇団普通(@三鷹市芸術文化センター星のホール)
昨年の9月にガンの手術で2週間近く入院した。
コロナ禍で面会は基本禁止だった。
入院初日に家族が付き添ったり、退院で迎えに来たり、
そして手術当日の術前・術後には医師の判断で、病室で少し家族と話が出来る。
そんな感じだった。私の入院した病院は4人部屋だった。
一番安い、廊下側のベッドは一杯で窓際のベッドで二週間近く過ごした。
その間、他の入院患者さんたちが看護士さんや薬剤師さんと話したり、
時々やって来る家族と話したりというのを私はベッドの上で何気なく聞いていた。
私より長く入院することになった方が居て、
最初は冗談を飛ばしておられたのだが、だんだんと自分の現実が見えて来て
自信がなくなっていく様子が感じられて、なんだか切ない気持ちになった。
そんな経験をしただけに、本作は私にとって
とても印象深く見ることが出来た。
全編「茨城弁」で上演とのこと。作・演出の石黒麻衣は茨城出身だそう!
茨城と言えば陸上競技のスタジアムに数年前ロケ撮影に行って以来。
高速のサービスエリアにたくさんの種類の「納豆」が売られていた。
茨城の病院の4人部屋。いろんな事情を抱えた人たちが入院している。
循環器内科か脳神経外科か?脳出血で身体が麻痺した人などが中心の部屋だが病状は様々。
ものすごいリアリティのある芝居。
最初、声が小さすぎてシーンとした中で俳優たちのセリフをみんな懸命に聞いた。
城山羊の会の山内ケンジの舞台にも似た静かすぎる演劇。
毎日のように妻が見舞いに来て、東京からは娘も見舞いに来る片岡(小野ゆたか)
元気な時はものすごく喋っていたのだが、病気になって自由に喋れなく
自立歩行は何とか出来るのだが、ままならない。
理学療法士さんが来てリハビリを始める。
自立歩行が出来るのだがおとなしい性格で家族は誰も来ない小林(渡辺裕也)
半身が完全に麻痺しており歩行が出来ずに車椅子で生活している佐竹(用松亮)。
用松は言語機能には問題がなく大きな声でストレートに入院患者やその家族に語りかける。
つっけんどんな物言いの奥に人間味と優しさがあふれていることが感じられる。
茨城弁がそうなのか?
彼には子供がいなくて妻と二人きり。そして彼は、さらにガンが見つかる。
若い入院患者の橋本(折原アキラ)は症状が軽い。
都会に結婚して出て行った娘が戻って来て、こっちで暫く暮らすと父親に告げる。
私たちはその会話や俳優の動きなどの様子から彼らの事情を読み取り考える。
自分事に置き換えてしみじみする。
回復に向かう人もいるし、徐々に悪くなっていく人もいる。
実際に入院した時に、ほんとう医療従事者の人たちの献身的な医療行為に感謝した。
これを見てまたそんなことを思いだす。
途中で過去の家族の話がインサートされる。照明が変わるタイミングでそれが行われる。
そして俳優さんがいくつかの役を演じているので
事前に織り込みの出演のリストを読んでおくとさらに理解が深まるような気がします。
小津安二郎の「東京物語」でありウッディ・アレンの「インテリア」であり「八月の鯨」
などの映画を思い出した。
寄せて来る変化に私たちはどう向き合っていくのか?が問われる。
上演時間2時間強。31日14時の公演にはアフタートークで静かすぎる演劇の旗手(?)
山内ケンジさんが来られるらしい。
8月8日まで。