「湊横濱荒狗挽歌~新粧、三人吉三。」KAATプロデュース(@KAAT 大スタジオ)
「みなとよこはまあらぶるいぬのさけび」と読むらしい。
作:野木萌葱、演出:シライケイタ。
三人吉三を初めて見たのは2007年確かコクーン歌舞伎だった。
中村勘三郎が出演していた。https://haruharuy.exblog.jp/5584312/
そして2014年に木ノ下歌舞伎でも拝見していた。
https://haruharuy.exblog.jp/23110613/
本作を拝見して、あの「三人吉三」を翻案して創作するのが
いかに大変なことなのか?ということを痛感した。
歌舞伎ファンはそもそも「物語」が頭に入っており、
それを歌舞伎役者が再現する様子を見に行く方が多いのではないか?
どの役者がどの吉三をやるのか?そしてどのように見栄を切り、
どのように外連味を持って演じるのか?に焦点があてられる。
しかしながら、その関係性をベースに現在の「湊町横濱」に置きかえて
新たな物語として語りなおす場合はどの役がどの吉三でどういう出自か?
親子関係か?などが見えてこないとわからない。
普通に書くと多分数時間を超える長い作品になってしまうのだろう。
それを本作は2時間5分という尺にまとめ提示する。
人間関係の相関図があるとわかりやすくなったのでは?と思った。
俳優の役の写真と相関図が配られていたら
私ももっと物語に入っていけたのかもしれない。
俳優それぞれは個性的で魅力的な方ばかり。
シライケイタらしいハードな演出。銃撃や暴力シーンが連続する。
舞台は横浜のあるホテルのロビーとその横にある飲食スペース。
バーなのか?カフェなのか?中華街的な要素も盛り込まれており
私の好きな中華ホテルの雰囲気。
上海の租界地にあるかのような雰囲気が個人的な好みなのでこの美術はかなり良かった。
真ん中の階段を上がると2階の左右に客室スペースがある。
ヤクザと刑事の癒着とそれに伴う抗争が描かれ、
麻薬の販売などをする売人やヤクザの愛人などが登場する。
特徴的なのは「人型」(那須凛)というホテルのメイドの
アンドロイド?サイボーグ?が登場すること。
那須凛の演じる「人型」を通して外部の視点がそこから獲得できる。
「人型」を作った人形師でありこのホテルのオーナーである
大久保鷹が松下幸之助に見えて仕方がなかった。
そして、人物関係の詳細と関係性のディテイルが見えないまま舞台は終息を迎える。
私の理解力はそこまでだった。
しなかしながら愛人を演じる村岡希美が関係した男たちと語り合うシーンが
何度か登場するのだが、
静かなお芝居ながら印象に残った。
この二人の会話から彼らの人間関係や相関図がもう少し見えてくれば、
このアウトローな世界に生きることの大変さや
運命の悲しさが見えて来たのだろうか?
暴力団新法によってヤクザとか暴力団が徹底的に排除されようとしている時代に、
映画界でも今年になって『すばらしき世界』(2021) 『ヤクザと家族 the family』(2021)
『孤狼の血 LEVEL2』(2021)などが公開されているのは何か理由があるのだろうか?
そして、私も最初の2本は映画館に見に行っている。
映画『仁義なき戦い』の連続上映に通った頃の記憶が蘇る。
上演時間2時間5分。12日まで。