マイク・ミルズ監督。彼はCMの世界ではかなり有名。
GAPやNIKEなどのCMを何本もてがけている。
その彼の長編映画第1作がコレ。
ミッシェルゴンドリーの映画を見たときも思ったことだが、
PVやCMでは色彩表現や、映像の強さ、
アートディレクションされた画面みたいなものに非常にこだわる監督が、
映画になるとそのストーリーが完全に中心になる。
奇をてらったところなどがまったくないのだ。
パっと見て、あれ?この映像のトーンとかでいいの?
などと思ったりする。
しかし、人間がキチンと描けていれさえすれば結局は面白い映画に
なるんだなあと納得。
ミッシェルゴンドリーの「ヒューマンネイチャー」を見たときにも
まさしく同じ感じを抱いた。
この映画、まず主演の男の子がいい。
ルー・プッチを発見しただけでもこの映画は見る価値がある。
そして、彼はサンダンスやベルリンの映画祭で受賞している。
この男の子は高校生になっても親指をしゃぶる癖が残っている。
だから「サムサッカー」。
この男の子の成長物語。
まるで教養小説と呼ばれている、山本有三の「真実一路」のような。
彼が躓きながら成功し、上手くいったかに見えて実は、
それは本質的なことではないんだ、ということをわかりやすく描いている。
秀逸だったのは、ディベートクラブに所属している彼が、
あることをきっかけに、どんどんディベートが上手くなり自信をつけ、
変化していく過程が、面白かった。
しかし、結局、真実はそこにはなかった。
そこから、初めてマイクミルズが僕たちに伝えたかったことが現れる。
ある種、ステレオタイプなところがあることは否めない。
落ち込んだ主人公の少年に、家族や昔のGFが交錯する。
そうして、少年は本質的なことを少しずつ学ぼうとしていく。
高校生のときに見たい映画のひとつになりえたのかもしれない。
青春映画というジャンル自体が消滅したかのように見える現代だからこそ
敢えてこういった映画が出てくることに意味があるのかも?