紀伊国屋サザンシアターは、縦に長い構造とでもいったらいいのか?
奥行きが長ーく感じる。従って、舞台が遠くに感じる。
また、こまつ座の新作は、公演が遅れることがある
というのはよく言われていることだ。今回の公演もしかり。
初日近くにチケットを購入した方々は払い戻しの憂き目に会っている。
ものすごい豪華キャストである。浅野ゆう子、佐々木蔵之介、川平慈英
北村有起哉、梅沢昌代、大鷹明良、そして前田亜季。
前田亜紀の舞台は始めてだったが、その発声の強さと
独特の明るいキャラを見て驚いた。大人しいイメージがあったので
それとのギャップに戸惑ったのかもしれない。
舞台は、日本放送協会の脚本班分室。
「尋ね人」という番組を担当しているスタッフたち。
井上ひさしがNHKで番組などをやっていた頃と重なる。
そこで毎日送られてくる、膨大な「尋ね人」の手紙を読んで
放送するものを決めていく。放送された後もアフターケアは
欠かさない。所在の情報を伝え、戦中に離れ離れになった人を
結びつけようとする。聴取率90%!
そんな時代だったんだなあと改めて思った。
当時はまだ、GHQが日本を占領支配していた時代。
米国の不利益になりそうなことは放送しないという規則になっている。
制作スタッフは自分の存在を賭けてGHQと闘う。
広島の原爆で離れ離れになった方々の「尋ね人」を放送した。
責任者だった、浅野ゆう子と佐々木蔵之介は逮捕拘留される。
佐々木はここで日系二世の米国軍人という難しい役を演ずる。
川平が、記憶を失くした男としてNHKのこの分室を訪ねてくる。
井上ひさしらしい音楽劇の要素もふんだんに盛り込まれる。
全員で踊りながら歌う。
浅野ゆう子のダンスと歌を初めて体験した。
スタイルがいいので見ていて美しい。
朴勝哲のピアノが、戦後すぐの状況をノスタルジーをもった猥雑として
うまく表現出来ていた。