「厩火事」「錦の袈裟」仲入り「たらちね」ときて
シネマ落語「たらちね下(マイ・フェア・レディ)」と続く。
志らくの喋りは緩急自在、今回は言葉の話。
言葉が通じることでココロが通じるということは
普遍的なことなのだろう。
その大きなくくりのテーマからこれらの噺を持ってきて再構成して、
自分のものにしてしまうところにこのシネマ落語の魅力がある。
いかに主題をザクッと捉えるかということが
この落語の出来を左右するのかも知れない。
マクラで志らくが、海外旅行に行って、
言葉が通じないのでいろいろなトラブルに遭遇する様を
面白可笑しく聞かせてくれる。
ニューヨークの駅員が横柄なこと。
その横柄な駅員を営団地下鉄の職員に置き換えると
これがおおげさで思わず笑ってしまう。
また、志らくはマクラや演目の間で
落語のこと当時の風俗のことを説明してくれるのがありがたい。
落語初心者にとってはわからないところがたくさんある。
それを、いくつかのポイントに絞って、あれはこういう意味なんですよ。
などと教えてくれると。
おお!この方はご隠居さんのように何でも知っていて教えてくれるのか?
みたいな気持ちになって嬉しい。
「たらちね」のオチがよくわからないまま。
「たらちね下(マイ・フェア・レディ)」に続く。
映画自体は田舎から出てきた女の子が
由緒正しき場所でレディになる特訓を受け、
素敵な淑女になるとともに、
その先生との交流が生まれるというもの。
このシネマ落語は逆の発想である。
言葉使いが時代がかって丁寧すぎる女を
「与太郎」というとぼけた男が、下町の長屋言葉に矯正?
していくというもの。
そして彼女と与太郎は、、、。
与太郎のキャラクターが
荒川良々(いま、カロリーメートのCMに出ているあの方です。
TVドラマ『タイガー&ドラゴン』では『ジャンプ亭ジャンプ』という名前で
噺家の役を演じていた。)にだぶって仕方がなかった。
「たらちね」のオチは以下のようである。
言葉の丁寧な奥さんが
「恐惶謹言(きょうこうきんげん)。」と言うのに対して、
八五郎が「お、おい、脅かしちゃいけねぇよ...
飯を食うのが『恐惶謹言』なら、
酒を呑むのは『依ってくだんのごとし』か 」と答える。
これについてこのような事が書かれてあった。
「恐惶謹言」(きょうこうきんげん)は手紙の書留文言で、
「仍(依)て如件」(よってくだんのごとし)は証文の書留文言です。
これを知っているひとはここで笑います。
しかし知らないひとは笑えない。
ということですが、
これを読んでも何だかわからない僕は、
いったいいつ笑えるのだろう?
(後日、このオチについてメールを頂いた。)
漢学者の娘の設定。そもそも文語文を使うこと自体が変
なのだが、この掛け合いがおかしいのは、今でいうと、
「使い方の変な英語で会話している」ようなおもしろさ。
学があることを気取っている(和文の古文)+新しい漢字を
音(オン)で読む=この二つを使っていることのおもしろさ…
でしょうと。
うーん。
頭では理解出来るのだが。
むむむむ。