この、ひとつ上シリーズもこれで三作目である。
奥付をみると2006年12月とある。
ああ、半年以上も本棚に眠っていたのか?
いつものように凄いメンバーたちが
広告制作のチームについて語られている。
クリエイティブディレクターとして優秀な方々である。
みなさん、広告制作のチームのリーダーから出てくる言葉は
仕事を通じて経験した言葉だけに説得力がある
。みなそれぞれ勝手にチームのことについて
語るわけであるが共通するところはたくさんある。
必要最少人数のチームでやること。
チームを組むときには、そのスタッフの人選に対して
非常にデリケートになってスタッフィングをすること。
また、それとは逆に、プロフェッショナル集団の集まりであれば、
チームなどどのような形態であれ
高いレベルのクリエイティブを作ることは出来る筈で
あるという意見も同時にある。
打合せまでに、プロ集団としてきちんと
そのプロジェクトについて考えてくる。
そして、打合せは最小時間で集中して行う。
その時間は2-3時間が限度であり、
そのセッションというか打合せを何度か行い、
クリエイティブの高みににじりよっていく。
プロのクリエーター同士の意外な組み合わせから
意外な新しい価値が創出されることがある。
そのことを受け入れ大切にするということを
きちんと行わなくてはならない。
そこから新しいクリエイティブが生まれる。
職種にこだわらずに自由にアイデアを出す中から
そんなことが生まれてくるのである。
クリエーター自身はわがままである。
わがままであってもきちんと結果を出せば、
それは芸のひとつとして容認できるが、
頑固過ぎるのはいけない。
などというようなことが繰り返し語られている。
本書の面白いところは、
あ、ここは面白いなというようなチームで制作するにあたっての
理念や考え方のポイントみたいなものを、
編者である真木準さんが拾ってくれて、
欄外に青字できちんと記してくれているところである。
例えば、こんな感じです。
引用する。
「楽しく、仕事ができるチームをつくるためには、
やはり人を大切にしなければいけない」(山本幸司)
「いくら正しいと信じているものでも、
自分が『こうだ』と思っているものは、
自分の頭の範囲内のもの。
そこにこだわっているうちは、
それ以上のものはできない。(児島令子)
「チームは個性の異なる者同士が助け合う場所。」(葛西薫)
「何かを続けていくためには
エゴイスティックなものと同時に、
残りの半分はパブリックなものが必要」(岡康道)
岡さんが面白いことをおっしゃっていた。
「クリエイティブな仕事をするために必要なことは、
とにかく楽しい気分でいることです。
『毎日が面白いな』と思っているようなときにしか、
アイデアは思いつかない。」
最後に、制作会社から
ディレクターの中島信也さんが語っている。
「スタッフが動いてくれるのには、
きちんとした信頼関係が必要です。
そのためには頭を下げてスタッフにお願いすること。
そしてスタッフのモチベーションをいかに上げてもらい、
彼らの卓越した技術を引き出してもらいたい。
あくまでもスタッフが主体的に動いてくれるような
環境を作っていくこと。
また、現場で予想外な方向に作業が進んだときには、
基本、なりゆきに任せてみる。」
なるほどと納得&感心である。
そして、思った。
これって会社経営者論であり、
素晴らしいリーダー論であるのだなあと。
ということは、広告業界以外の全てのモノを作るチームにも
置き換えることが出来るということである。
それが2000円で手に入るのは、
ありがたいことでございます。