三鷹市芸術文化センターが独自に行っている、
MITAKA “Next” Selection 8thの第1弾がこのsmartballの公演。
ここのプロデューサーである森元さんは、
いつも新しい試みの劇団を探し続け、オファーし、
何年越しかで三鷹市に劇団を招聘する。
斬新な切り口の舞台が多く、王子小劇場、こまばアゴラ、
吉祥寺シアターなどと並んで面白い試みをする劇場となっている。
新しいものを探し続けるというのは並大抵の努力ではない。
年間いったいどれくらいの舞台を見ればいいのか検討もつかない。
公共劇場にこのような方がいるということは
演劇世界への大きな貢献と言えるだろう。
今回のセレクションはsmartball、サンプル、モダンスイマーズ、天然スパイラル
の四劇団である。全ての公演が楽しみである。
東京に台風が上陸する夜に三鷹へ向かった。
もうすでに強風圏に入っていたのだろう、
三鷹市内は風とときおりの横殴りの雨で大変なことになっていた。
「たきたろう」という店でラーメンを食べていたら本当に凄い雨になり、
そこから劇場までの道のりは、まるで演劇道を
究めるための求道士の修行のようであった。
7時前に着いたので、ロビーで濡れた服を
タオルで拭きながら乾かす。
ここの劇場は待合のロビーが広くて気持ちがいい。
駅から遠いが環境はいい。
smartballの公演を観たのは前回公演の王子小劇場が初めてだった。
ポツドールとの交流関係がある劇団ということで興味をもった。
作・演出は名執健太郎。実際、見て驚いた。
彼はノワールを描きたいと常に言っている。
今回のそれは中央線ノワールとでもいったらいいのだろうか?
新宿から吉祥寺にいたる地域での物語が展開する。
いつも、ヤバイ人たちがたくさん出てくる。
暗黒小説にあるようなアンダーグラウンドなエピソードが満載である。
その事実を受け入れるだけでも大変である。
名執の創作が現実を上回るのか、
現実のエピソードを集中して編集するとこのようになるのか?
「裏モノ」というジャンルがあるとしたら、
この劇団はまさにそのギリギリのところで
舞台が成立しているとでも言えばいいのだろうか?
何組かの設定と人物関係が後に交錯していく。
小さな設定から恐ろしい事実を予感させていくのが本当に上手い!
エンディングに多少強引なところは感じるが
あのように収束させていかざるを得なかっただろうということも理解しつつ、
もう一押し、と、いきたかった。
彼らの後日談みたいなものが、スクリーンに投射されるだけでも良かった。
いきなりのカーテンコールでとまどった。
ああ、この劇団はカーテンコールがあるんだと、
ポツドールとは一線を画しているんあだなあと実感。
実際、ポツドールのもつ、圧倒的な負の感覚は名執作品からは感じられない。
それはいい意味でも悪い意味でもそうなのだ。
良く出来た暗黒小説を、キチンと提示しているという印象。
音楽が鳴り響きながら各シチュエーションの出演者たちが
同時に演技をして暗転する方法は素晴らしかった!