日本舞踊の公演である。初めての体験。
紋三郎派藤間流 創流五十周年記念と題して行われた。
もともと、紋三郎派は「大橋屋」という江戸前の屋号を持っていた。
五代目紋三郎(先代)が四代目、尾上紋三郎の後を継ぐときに、
彼は歌舞伎役者の道を選ばず振付師の道を選んだそうである。
決められている運命とは少し違う道を選択して
それをやり続けるというのも一つの生き方だろう。
その生き方は生半可では続けられないだろうなあと思う。
現在の紋三郎は六代目である。
紋三郎の妹に、藤間紋鶴という美人がいる。
たまたま彼女の夫にあたる方が僕の知り合いであった。
そのSさんと紋鶴さんと食事を、たまたまする機会があり、
今回の舞台を見に行かせてもらえることになった。
国立劇場を1日借りて、11時~19時までの長丁場。
午後の遅めから国立劇場に足を運ぶ。
何と、お土産つきである。
銀座「大増」のお弁当と花園万頭の「濡れ甘納豆」を手土産に頂く。
11時~見続けていればさすがにおなかが空くだろう。
昔の歌舞伎公演は、朝から日没まで延々と行われていたということを思い出す。
観劇はハレの日の行事であるということを再認識。
演目が次々と行われる。「鷺娘」「外記猿」「禿」(かむろ)
「秋の色種」「藤娘」ときて紋三郎の「福の神」、
紋鶴の「白藤」、そして紋三郎と紋鶴の「将門」と続いた。
歌舞伎の振付師だけあって舞台は、歌舞伎と何ら変わらない。
黒子が居て、小道具を持ってきたり、もって行ったりする。
邦楽が心地よい。耳と身体に響いてくる。
生の邦楽はこんなにも気もちいいのかと思う。
歌舞伎でも邦楽がやられるが、
台詞や演技が中心なので音楽自体が脇になるのだが、
日本舞踊は台詞がないので
長唄の朗々とした響きと三味線や鼓などが妙に心地よいのである。
踊りに関しては初めての体験だったので勝手なことは言えないが、
あるカタチを作って決めていくというような踊りとでもいったらいいのだろうか?
しかし、歌舞伎の振付師とはいったいどのように
歌舞伎公演にかかわっていくのだろう?
最後に演じられた「将門」は何と台詞があった。
へえええ?と驚く、とともにこれは歌舞伎か日本舞踊か?
境目があるのかないのか、何がなんだかわからなくなる。
がまの被り物が出てくるのが気に入った。造形が面白い。
「白藤」だけ演奏がテープ録音されたものだった。
何か意味があるのだろうが、
折角、楽士の方々がいたのに残念だった。