ギリシア悲劇をモチーフにした、創作舞台「三つの悲劇」の第二弾。
舞台は1951年の福岡にあるダンスホール。
戦後の傷跡も消えないまま朝鮮戦争が始まる。
戦争特需に沸き立つものがいる。
また、戦前日本で生きるために日の丸を振っていた朝鮮人の姉弟がいる。
彼らは、もう朝鮮半島には戻れない。
姉はダンスホール兼売春宿(二階の部屋で客をとる。)で
ダンサー兼売春婦をやっている。
七瀬なつみ演じる安満喜が力強い。
彼女の名前からもわかるように、アンドロマケとは
七瀬なつみのことなんだろう。
ギリシア悲劇の原典を知らないまま見たのだが、
そんなことを知らなくても十分楽しめる舞台になっていた。
新国立中劇場の広さを小劇場的に何とかしようという
工夫が随所に見られた。それは第一弾から続いている。
客席の前部を取り払い、そこまで舞台がせり出している。
最前列は10番から始まっている。それでも中劇場は広い。
天井が高い。その開放感あふれる中で、
スズナリでやったらさぞかし素敵だろうという舞台が上演されている。
客席はS席、とA席の間に売れ残った席があり、
それが空々しさを倍化させている。
さぞかし、役者のみなさんは寂しい想いをしたことだろう。
これは、そもそも、新国立劇場のプロデュースの仕方、
チケットの値段設定などに問題があるとしか思えない。
これだけの豪華なキャストで演じられるのだから、
S席7350円、A席5250円、B席3150円は決して高くはないだろう。
しかし、SとAの違いはいったい?
そんなにチケットの値段に差をつけることをやめて、
見やすい場所を中心に観客を集める努力をすべきだろう。
この舞台自体のプロダクションワークが素晴らしいだけに、
残念な気持ちで一杯である。
しかしながら、舞台の完成度は高く、
とっても楽しめるものになっていた。俳優たちがいい。
僕は個人的に田畑智子が好きなので、
彼女が出てくるだけで満足。
「お引っ越し」でデビューしてから二十数年が経つ。
そのころから、おもろい女の子やなあと思って見ていた。
その後、京都で学生時代を過ごしていた間
芸能活動をお休みしていたような記憶があるが、
NHKの朝の連続ドラマ「私の青空」でヒロイン役を果たした。
新撰組での近藤勇の妻の役はほんとうにはまりやくだった。
彼女の体型が和服に似合う体型なんだなあと、
本日舞台を見て、改めて思った。
恋愛の片思いが連鎖する話。
よくあるといえばよくある話を、脚本の鄭義信がうまくまとめている。
時代設定、場所の設定含めて
リアリティをもたせるための工夫が随所に見られる。
あの時代だったからこそ、起きてしまったことが当然あるのだろう。
「オーバー・ザ・レインボウ」の曲が効果的に使われる。
虹の向こうには未来があるのか?
絶望を経験した七瀬なつみと、長嶋敏行には未来があるのか?
大石継太と梅沢昌代のカップルには未来があるのか?
そして最も気になったカップル。
田畑智子と山内圭哉の二人には絶望が待っているのか?
救いがない中で救いを求め続ける人たちのドラマがここにあった。
主催者は全力で客席を満席にする努力をすべきだろう。
当日半額チケットなどを導入するのはいかがでしょうか?
観客席の空席が本当に残念な舞台だった。