冬春三夜と題して1月、3月、5月とひとり会をする。
その一夜目である。
国立劇場演芸場は多くの客であふれていた。
入り口に張り紙がしてある。
「本日の、当日券はありません。」左様に
入手しづらいチケットである。
奇跡的に電話がつながった。
「はい、夢空間です。」
「おおおおお!」
三人がかりで電話をかけまくりこの様である。
折込のリーフレットに談志が
昨年12月に演じた「芝浜」のことを書いていた。
あの「芝浜」は、人生、落語家の総仕上がりであったのか。
だとすると後は抜け殻“談志の抜け殻でござい。”と
「よかちょろ」のフレーズとなるのかも・・・。
けど、“続ける”という他に方法を知らない。
どうすりゃいいのか思案橋。
長い長いお囃子を延々と聴きながら談志の登場を待つ。
おどおどといつものように高座にやってくる。
よろよろと座布団に座って、マクラが始まる。
談志のマクラは批評性に満ち満ちている。
高座で真剣勝負を「客」と行うというような感覚。
一騎打ちしていたら、僕なんかたまったものじゃあないが、
たくさんの観客たちと談志との勝負なので、
なんとか持ちこたえられるのである。
これが吉川潮みたいな方であれば一騎打ちも可能かと?
わかる話もあるし、まったくわからないこともある。
談志はジョーク(小話?)をたくさん知っているのだが、
そこから彼の記憶とリンクしてきたものをいろいろとやってくれる。
面白いなあと思うものもあるが、
何だかわからないというものの方が多い。
よーく考えてもわからない。
暫くすると談志の盟友である、石原都知事がやってくる。
隣にはSPと思われるような屈強なスーツ姿の男性が座っている。
テレビでしか見た事がない、石原さんと
ドラマや映画でしか見た事がないSPがいる。
一瞬にして会場の雰囲気が変わる。
観客たちも多少緊張するところが
生の舞台の面白いところである。
暫くして、「堪忍袋」。
あの落ちは、少し面白かった。
とはいっても、今回は全体に、肩の力を抜いた公演だった。
仲入り後、「疝気の虫」。
蕎麦をすするシーンなどの食べ物の描写と
「疝気の虫」たちの描写が面白かった。
これもかるーい感じで終了する。
石原都知事は終演後、談志さんの「また!」という声を受けて、
颯爽と帰っていった。
カッコいい70代である。
まったくタイプが違う談志と石原慎太郎が盟友というのが泣かせる。
三月にNHKで「立川談志十時間」という番組が放送されるらしい。