人斬以蔵=岡田以蔵の生涯を描いたお話。
土佐で足軽百姓をしていた、以蔵は、
武市半平太の手下として剣の修行のお供に行く。
武市は剣の修行を終えたころ土佐勤皇党を作り、
尊王攘夷運動にかかわるようになっていく。
以蔵は彼の下で、運命のヒトコマとして働く。
以蔵自身、自らの想いや発意などはなく、
武市などの上司に言われるままに人を斬っていく。
いわゆる殺し屋である。
青木豪(グリング)が脚本を担当している。
青木の脚本はわかりやすい。
僕たちの知っている幕末の史実にのっとり忠実にお話を構築していく。
以蔵の幼馴染の女性ミツとのかかわりがいい。
戸田恵梨香が懸命に演じている。
森田剛演じる以蔵と戸田演じるミツとのかかわりの部分が一番印象に残った。
ミツは侍の娘ながら、人を殺しあうようなことはキライ。
彼女は、土佐を出て一人京都の叔父の経営している居酒屋へ働きにやってくる。
彼女はことあるごとに以蔵に、「おまん、それでほんとにええきに?」と突きつける。
以蔵は時代と運命に翻弄され、下手人としての運命を突き進んで行く。
その悲劇的な、あまりにも悲劇的な展開が少々、鼻白む。
会場はV6ファン、もちろん森田剛ファンで溢れかえっている。
女性比率90%くらいだろうか?
彼の人気でこんなにも人が集まるのだと思った。
森田剛の動きは鋭く、殺陣も難なくこなし、演技もこなれていた。
声が枯れていたのは、いままでの熱演を思い起こさせる。
それだけに、あの脚本の展開は惜しい!
あまりにも予定調和的な展開が残念。
ミツとのかかわりだけで満足できる筈がないのである。
もっともっと以蔵のココロの闇や、どうしようもないところを描いて、
その以蔵が聖なるものへと極端に転化するような芝居を見たかった。
以蔵の葛藤の描き方が薄い。
(以下、ネタバレ含みます。)
唯一、最期に、以蔵が処刑される前、
土佐藩の山内容堂が問う場面が転化であった。
「誰に命じられて殺された?」
以蔵は答える。
「天です。天の命によって、暗殺をしたのです。」と、そしてこうも言う。
「誰に命じられたということではなく、天に命じられたです。
そして、天はいつも変わります。時代とともに変わっていくのです。」
この数行の言葉に以蔵の魂の変化を見た。
本作は土佐と京都が舞台の中心となる。
よって役者たちは土佐弁や京都弁、そして薩摩弁などを懸命に話す。
方言とは、何て豊潤なのだろうと、改めて思う。
特に、父親方が土佐出身である僕は、
「ほんま、なつかしいものを、聞かせてもらったきに。」というような感覚に襲われた。
ドラマ「鹿男あおによし」は奈良が舞台にもかかわらず、
関西弁を話すものが一人も出てこない。
そのあまりの空々しさにぶっ飛んでしまいました。
「ええかげんにしなさい!」と!