イトーカンパニー企画・製作の初めての舞台。
イトーカンパニーと言えば、いまや、蒼井優、ともさかりえ、
そして、すほうれいこを擁した有名な事務所。
カンパニーとして次世代の俳優を育てようという意図もあって
このような試みがなされたのだろう。
観客の視線が注がれることによって俳優として
成長していって欲しいというイトーカンパニーの
母親のような気持ちが今回の舞台を完成させたのだろう。
駅前劇場という小屋で、一体何が出来るのか?
試行錯誤の連続だったのかも知れない。
今回の舞台は「TDL」という章と「USJ」という章に分かれている。
それぞれ1時間弱の舞台。
TDL(とりあえず、男子ラブ)は若手の俳優たちが出演。
USJ(唄わない夜の、白いジュークボックス)は
すほうれいこ、石井美奈子などが出演している。
折込のリーフレットにこうある。
「隕石が落ちてきそうなある日の午後のお話」。
この言葉にある状況のみを一緒にすることだけをルールとし、
それぞれ葛木英(メタリック農家)と千葉雅子(猫のホテル)が執筆している。
「TDL」では、葛木の若者言葉と、メールの言葉が爆発!
そのストーリーから繰り出される独特の毒が
小劇場らしいテイストを添える。
決してテレビなどでは見られないものをそこで見る事が出来る。
その自由さこそ小劇場らしさと言えるだろう。
カエルが出てくるシーンなどはドキドキする。
初めての舞台となった5人の少女たちは
演技に関してはまだまだこれからだろうが、
この舞台を通して得た生の感覚は得がたいものになるだろう。
最初の15分くらいを過ぎると
彼女たちの演技を受け容れる事が出来るようになる。
その後、すーっとその物語世界の中に突入することが出来れば
この舞台を見るのに成功したと言えよう。
最後の愛の告白の連鎖の場面が、
映画「レザボアドッグス」の拳銃の連鎖のシーンのように
スピード感があって楽しめた。
「USJ」は、またうって変わって
千葉雅子が描く千葉さん的、演歌の世界が描かれる。
決して華やかで格好よくない面々、
どこか影のある面々を描かせることに関しては千葉雅子は、天下一品。
カンカンにあたっていたブルーカラーの男たちが缶コーヒーを
買いに行く話から
「また会う日まで」が流れて、
TDLの教室のセットから場末のスナックを改造した
選挙対策事務所に変わっていくシーンが格好いい!
福原充則(ピチチ5)の演出の意地みたいなものを感じる。
すほうれいこは相変わらずいい。
謎の失踪した姉?を演じる。
彼女の声がいい。
全てが思わせぶり。
この人たちはスパイなのか?
謎はどんどん深まっていく中で、この舞台は唐突に終わる。
あまりの唐突感に驚く。
ゴオオオオオという隕石のやってくるような重低音を聞くのだが、
その解は示されない?え????
という感じで終わるだけに謎が謎を呼び、
こちらは、まるでデビッド・リンチの映画を見たかのような
読後感に襲われる。
全く異質ともいえるような二つの舞台をつなぐものは
隕石襲来の予感に満ちた終末観である。
その終末観から、本当は何が見えたのか?
これはやはり、
このプロジェクトの第2弾、第3弾を待つことによって、
本当の意図が分かって来るのだろうか?