「デス電所」の竹内佑がパルコに初めて書き下ろした作品。
関西の小さな劇団まで丹念にリサーチし
拾い上げようとするパルコプロデュースの姿に頭が下がる思いである。
池田成志演出。
池田は「第三舞台」を経て、「山の手事情社」の設立にかかわっており、
その後、俳優として多くの作品に出演している。
彼の演出を見るのはこれが初めてである。
ものすごく芸達者な四人の男優と美しい小田茜の5人芝居。
場所はある田舎町の一軒家。
そこに住んでいたおばあさんが頚動脈を切って自宅で自死をした。
その49日後に彼女は発見されたのだろうか?
男たちは清掃屋さんである。
それも特殊な清掃を旨とする。
今回のような死体が腐敗し、血液が壁中に飛び散り、
誰もやりたがらない家をきれいに掃除して
原状回復していく。
このような仕事が実際にあるらしいということは
何かで読んだことがある。
どこかマーティン・マクドナーの舞台や、長塚圭史の舞台を彷彿とさせる。
お話自体は、小田茜と家族をめぐる謎が、
徐々に明らかにされるというもの。
では、あるが、そのお話自体に特筆すべきことはなく、
この舞台はここに出ている俳優さんたちが何をするのか?
ということを見るべき舞台なのかもと思った。
古田新太のチカラの抜けた舞台でのお遊びに満ちた演技は
新人俳優には絶対出来ないレベルのものだろう。
そこに同じくらい肩のチカラを抜きながら、
キビキビとした身体と喋りで周囲を惹きこんでいく、八嶋智人の演技がまたいい。
古田たちにからむような、からまないような
独特の乾いたコミュニケーションを取るスタイルが今っぽいのである。
そしてここに、全くキャラが違う俳優、
松重豊を起用したのがこの舞台の勝因ではないだろうか?
松重のキャラは、小劇場の俳優だけだとなかなか見つからないキャラクターである。
大きくて怖そうなキャラクターの人がときに弱弱しく、
ときに情けなくすることによって面白みがじわじわと染み出してくるのである。
池田も俳優として上手いし、面白いのだが
今回は演出ということもあり、一歩下がったところに
立ち居地を置いていた。
さて、小田茜は、どうだったのだろうか?
この圧倒的に濃いキャスティングに立ち向かうには、
実は、もっと、もっと、激しい芝居をすることが必要だったのかも知れないと思う。
そのことがアイドルやTVドラマに出ているタレントとの
大きな違いになりうるのだから。
そうして初めて女優という役を演じることが出来るのだから。
そのためには身体をはってやることが
さらに必要だったかも知れないと思った。
これからの、小田さんの体当たりの演技が
どれくらいのものになるのか期待したい。
あの上手の石垣のパイプ穴から出てくる
濁り水とも廃液ともつかぬものは一体何だったのか?