演出家、中野利彰さんがメンバーの一人となっている
ジャズライブが1年半ぶりに行われた。
土曜日の夜、赤坂に行くとそこはお客さんで一杯だった。
座る椅子がもうすでになくなっており、
奥のカウンターで立ち見をしようと思っていたら
スタッフの方が折りたたみ椅子を二脚もってきてくれた。
聞くと休憩いれて3時間弱のライブだそうだ。
こりゃ椅子がないと大変だった。
立ちっぱなしで東京から大阪までいく時間である。
よく知っている曲をやってくれるので聴いていてもなじみやすい。
7人の演奏家とヴォーカルの女性(紅一点)の8人が
ステージで変わるがわる演奏をし歌う。
MCは中野さんである。
噺家さんのような飄々とした話し振りが自然体でいい。
いろいろなことを経験してきた後に、
完成されてくる芸みたいなものがあるのかも知れない。としたら、
この話芸はなかなかに完成されたものである。
現場で中野監督が、モデルさんに「ええ感じでしたね。
じゃ今度はB感じでやってみましょうか?」という言葉は衝撃的だった。
言葉遊びの究極の形がここにある。
言葉を意味ではなく音声で捉えていく言語感覚は
こういった音楽活動を通じて醸成されたものなのだろうか?
以前このライブを聞きにいらしていた
佐藤雅彦さんがこのライブを見て、
「これは究極の草ジャズですね。」とおっしゃったそうである。
草野球になぞらえたそれは
さすが佐藤さんらしい的確な言葉として集約されているなあと思った。
「草ジャズ」なんで何となく楽しみながら聞きながら、
ときどきハラハラしながらも
知っている方々の一生懸命な姿を見て感動する。
そういったものがこのライブにはあるのだろう。
仲入り、休憩時間に幾人かの知り合いと喋ることが出来た。
若きトランペッター以外の演奏者は全員、
いい年をした叔父さんたちである。
その方々が60歳を過ぎてイキイキと活躍している姿は本当に素敵である。
みんなきちんとしたシャツを着て
スラックスに革靴という正統派のスタイルで演奏するというのも洒落ている。
この洒落のめすというスタイルが最近忘れられていないだろうか?
とこのライブを見て思った。
市川準監督の映画「会社物語」にも定年退職の日に、
ハナ肇演じる総務課長?だったかが送別会でジャズライブをする。
これは新しい人生のスタートであるとともに
ある帰結点としてのライブでもあった。
その両義的な意味が見ているものをしみじみとさせるのである。
60代の紳士たちの真摯さを見せ付けられた公演となった。