ずいぶんと前に見た映画のことを書いたストックがあったので一気にアップします。
「ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー映画祭2008」と題された特集上映。
この監督の熱烈なファンであるSさんから教えて頂いた。
Sさんはわざわざリーフレットをスキャンして添付ファイルで送ってくれた。
ありがたい。持つべきものはヲタク友達である。
ファスビンダーの映画を見ようという人はいったいどれくらいの割合でいるのだろう?
このようなマニアックな映像をサーバーに置いておいて
必要なときに課金すれば自宅にいながらネット経由で
自由に見られる時代はもうそこまで来ている。
そのためには煩雑だった著作権処理の問題を
クリアーしていければ
このシステムの未来は限りなく明るいだろう。
動画のロングテールである。
さて、赤坂の会議を終えて、再開発著しい薬研坂を越え、ドイツ文化センターへ。
ここの1階にワインバーみたいなカフェテリアがあるのだがいつも混雑している。
そこの1階にある講堂のようなところでの上映。
今回はDVD上映である。アテネフランセの会員割引で600円。
いやあ、参りました。
30年以上前にこれだけ破天荒でハチャメチャでラディカルな映画を
淡々と作っていたのかというその事実に驚愕した。
ファスビンダーはこれを喜劇として作ったのか?
喜劇は狂気から生まれるということを逆説的に描いたものなのか?
その根本に流れるのは性であり金である。
人間がその二つの大きな魅力に吸い寄せられることの
徹底的な戯画化であるのか?
それとも、ファスビンダーはそんなことを意識もせずにこの映画を作ったのか?
この映画のことを一言で語るのが非常に難しい。
ある夫婦とその夫の弟、そこにおばさんやら娼婦やらが次々と登場する。
並行して警官が登場しており彼は拳銃を探している。
しかし、一言で言い表せないほどハチャメチャで破綻した構造が
この喜劇を批評的なものにする。
それは見ている人それぞれが感じるものであればいいという前提に立っているのか?
ストーリーを追うものではなく、その場で行われていることを
共有体験することが前提の映画。
これはかなり演劇的である。
ファスビンダーはもともと舞台演出から映画の世界へ向かった。
この演劇的なものの中からラディカルな価値が見えてくる。
それは決して万人向けとはいえないかもしれない。
しかしながら、全く理解出来ないようでいながら
ものすごく画面に惹きつけられ魅入ってしまうという体験が
確かにそこにあったのである。
そんな映画とでも言えばいいのだろうか?ファスビンダー恐るべし!