著者の海部美知は現在シリコンバレーに住んでいる。
二児の母親でもある。
一橋大学社会学部からスタンフォード大学MBAを取得し、
現在子育てをしながら仕事をし、同時に、主婦の仕事も行っている。
さらに彼女の凄いところは「Tech Mom from Silicon Valley」という
ブログを書き続けているということ。タ
イトルはまるで梅田望夫の「シリコンバレーからの手紙」のようである。
同じ場所に、このように考え方が近い人が同時に情報を発信している。
本書も彼女のブログを見つけた編集者が出版をしようと思い立ったそうである。
こうしてWEB2・0の世界では埋もれかかっている原石のような才能を
発掘できるようになったと言える。
梅田望夫が推薦文を書いている。
またブログ、「デジタルノート」を書かれているNさんも絶賛されていた。
パラダイス鎖国とはまさに、いまの日本の現状を言っている。
海部さんが日本に一時帰国して感じたのが、
日本は本当に住みやすい国であるということ。
清潔で安全、物価は安いしチップの制度などない。
海外のものは全て日本で手に入れる事ができ、
情報もインターネット経由でリアルタイムに届けられる。
税金も安い。いまどき5%の消費税の先進国は日本くらいである。
そんな国に居る若者たちは日本を出て働く
日本以外のところに行ってみるというような発想がまったくない。
なくなってしまった。
まさに鎖国状態でいいのだ!といっているようなものである。
このままの状態で何が悪いの?ということである。
海部さんは、その鎖国状態に強い危機感を抱いている。
地球は一つである。
そこはずーっとつながっておりフラット化されている。
どこにいようが、どこで働こうが構わないという環境がまさにそこまで来ている。
そのような時代に鎖国状態に陥ってしまった国は世界の動きから
完全に隔離された状況になってしまうだろう。
海部さんは、自分たちで簡単に出来ることから始めて
ゆるやかな開国をしましょうと言っている。
そのための武器がインターネットである。
WEB2・0の世界で出来ることはたくさんある。
ひとつひとつの力は小さいのかも知れないが、
それがある程度の量になればゆるやかな変化が起きるはずであると語っている。
現在、日本がリードしている「カイゼン」という名のもとの
「果てしなき生産性向上」という方向がある。
そして、それとは別に「試行錯誤戦略」というのがあるという。
それは梅田さん言うところの「けものみち」を選択していく方法なのかもしれない。
その「試行錯誤戦略」をやりやすい環境にしていくということが
重要なことではないかと思う。
海部美知はその環境を「厳しいぬるま湯」という言葉で語る。
そのような環境の中から新しいものを生み出していって欲しい。
そこに未来の一つの姿があるんだよと語ってくれる。
その言葉は誰に向けて書かれたのか。
梅田が解説の中でその答えを書いている。
そんな彼女の結論は、アメリカで育っている2人の息子たちに
向けられた母親の願いとして、そして2人がいずれ
切り結ぶことになる「未来の日本」への希望の表明としても、読めるのである。