青木豪のグリングは、コンスタントにウェルメイドな舞台を作り続けている。
今回の舞台は、オーソドックスな中にも
狂気と愛がそこから垣間見えてくる。
今回は、青木が「東電OL殺人事件」に触発されて書いた舞台。
俳優が、みなこなれておりとっても素敵な舞台となった。
丁寧に丁寧に作られている。
広告代理店のOLが、部屋を借り
そこでアダルトビデオの撮影をしたり男に身体を提供したりしていた。
ある日、SM趣味の男に酒を無理やり飲まされて
吐瀉するのだが吐瀉物にのどを詰まらせて死んでしまう。
OL役の高橋理恵子がいい。
彼女の高校の同級生の男性がいる。(杉山文雄)
彼女のことが好きだった男は脚本家になっていた。
久しぶりに再会し、彼女を自分の家に上げようとするが
間が悪く彼女は帰ってしまった。
その後、OL(高橋)は何がきっかけになったのかわからないが
転落の人生をたどっていく。
青木豪はチラシの中にこう書いている。
「24から33まで、僕はどこにも居場所がなかった。
居場所を求めて様々な場所に出入りし、
よく知らないバーでよく知らない人と飲み、
時々、よく知らない人の家や、よくわからない場所に泊まった。
どこで死んでも良いと思っていた。
なんの価値もない人間が一人、野垂れ死ぬだけのことだから。」
と。これを読んで思った。
青木は東電OLの事件に大いに共感したのだと。
東京で暮らすということは、そんなところがあるのかも知れない。
青木が生きてきて孤独と向き合った事実がこの舞台に反映されている。
今、生きている意味を問おうとしている作品となった。
広告代理店や脚本家の仕事などが出てくるのは
青木の体験から来ているのだろうか?
女優の卵である女(安藤聖)とそのマネージャー(辰巳智秋)の会話がリアルで良い。
ああ、いるいるこんな人。
という感じがうまく出ていた。