「夢空間」という落語を専門に扱っている興行集団がある。
いまでいうところのプロデュース集団?
ここからDMが来ており、発売日に電話するとつながってチケットを取ることが出来た。
休日のビックカメラはものすごい人で溢れかえっている。
ここでゆっくりと買い物をするなんて出来ない。
大変な人の数である。
銀座のこの人出を見ると本当に不景気なのか100年に一度の恐慌なのか?
と疑ってしまう。
さて、このような経済状況の中よみうりホールは満員のお客さんである。
チケットが4000円で、1000人のキャパだとすると400万円を1日で売り上げることになる。
出演した噺家さんは前座を入れて5名。
前座、市丸の「牛ほめ」硬いしゃべり方がこの人の味になるかもと思った。
そして。春風亭百栄の「お血脈」。
喋り方がいい、うまいなあと思った。昨年、真打ちになったばかりであるそう。
この日は、上野の鈴本演芸場で、林家いっ平さんの三平襲名披露公演があるというので、
マクラでそのネタが披露される。
よってたかって襲名記念落語の体となっている。
続いて三遊亭白鳥の「真夜中の襲名」という上野動物園を舞台にした落語。
動物たちが格差社会で悩みもがき、それが人間社会に置き換えられるというもの。
多くの観客が、落語界の世界に置き換えて聴いている。
その話の入りこませ方のうまいこと。
初、白鳥体験だったが、本当に面白かった。
仲入り後、柳家三三の「加賀の千代」。
三三のマクラが面白かった、上野界隈の食堂のメニュー。
頑固ラーメン一徹と書かれたお店の本日のおすすめが
「マーボー茄子定食」だったとか
ある洋食店の看板には
「こだわりシェフのきまぐれサラダ」と書かれている。
「いったいどっちんなんだ?」
というトホホな話を淡々と聴かせていくその軽みがいい味となっていた。
その情けないやらの雰囲気の中、正統古典落語を聴く。
いい按配である。
江戸時代の俳人の風流さと庶民の感覚が出ており
とっても気持のいい噺にまとめてくれている。
トリは柳家喬太郎。
春らくごというのにみんな全く春のものじゃなく、三三などは大晦日の噺。
というようなマクラから子供の卒業式のマクラへ移り、
ようやく落語が始まった。
ケチの噺が始まった。
「黄金餅」という古典落語が始まったかと思った。
ところがいきなり「渡辺」「渡辺」と声をかけるものが登場する。
自宅で落語の稽古をしている友人、渡辺のところに相談にいったという状況だった。
落語の面白いところに、実際の画が見えてないので、
噺の流れから、観客を誘導して、
実は観客たちが思っていることと、違っていたというパターンがいくつか見られる。
はずし方の落差があればあるほど面白い。
緊張と緩和から笑いが起こるという黄金律が聞こえてくる。
喬太郎は結局、出会いと別れをテーマにしたまさに3月ならではの
新作落語「純情日記・横浜篇」。
この落語は登場する場所や地名に親しいと面白さが倍増する。