平田オリザ原作・飴屋法水演出。
この舞台の初演は伝説的な舞台だったそうである。
1994年青山円形劇場で上演された。
本当の女子高生21人に平田が戯曲を書いた。
それから15年の歳月が経っている。
今回は2年前に再演された静岡だけで行われた公演の再演。
芸術劇場中ホールという大きな劇場が何と満員!
当日のキャンセル待ちの列が出来ていた。びっくり!
スタイリッシュでかっこいい舞台だった。
本公演は定刻に始まりますと劇場の係りの方が口ぐちに言う。
舞台に入ると、時報が聞こえてくる。
ただいま5時58分50秒をお知らせしまーす。ピッ、ピッ、ピッ、ピーン!
この規則正しいリズムが繰り返される。
だんだんと時報のヴォリュームが大きくなる。
そして午後6時丁度です。
というときに天井からぶら下げられたバトン照明が舞台の上方に上がっていくのである。
そのときの効果音がまるで宇宙船のマザーシップの帰還のような雰囲気。
舞台は階段状に作られている。
平台と箱馬だけで作られたシンプルな階段状の構造。現代美術のよう。
そのシンプルさがシャープでカッコイイ印象を与える。
そこに大きなスクリーンが降りて来てスクリーンの前で女子高生たちが走り回り、
ダンスをし、縄跳びをし、音楽を聴いたり、管弦楽器を吹いていたりする。
その混沌の中、スクリーンには超音波の映像が投影される。
子宮にいる赤ん坊のモノクロ映像、そこに医師と思える人の説明がかぶる。
タイトル「転校生」というスーパーがスクリーンに出てくる。
そのスーパーが「転生」となり「生」となって舞台が始まる。
オープニングは登校風景次々と女子高生たちが階段状になったところに
椅子だけが美しく配置された教室にやってくる。
客席の通路が効果的に使われている。通学路であったり廊下であったりする。
そこに転校生がやってくる。
1937年生まれの転校生。彼女は72歳である。
彼女が来ることで教室の雰囲気が変わり、
生きるというようなことについてちゃんと考える場がそこに浮き出てくる。
女子高生たちは徐々に変化していく。
その中である女子高生が身を投げる。
誰もそれに気づかないまま舞台は進行していく。
女子高生たちは課題で世界の高校生について調べる。
その中で様々な世界の現実が見えてくる。
受験戦争が激しい中国での中学生の自殺、
コロンバイン高校などで起きた銃の乱射事件とその後の学校の対応、
イスラエル、ガザ地区の攻撃について、そしてユダヤ人ってなどなど。
世界はこんなにも多様なのかと、彼女たちはそういったことを通じて知ることになる。
そして岡本さん(転校生)を通じて世代や老いみたいなものを
身近に感じることとなったのだろう。
その中で彼女たちが精一杯生きているエネルギーのほとばしりを感じることができた。
未来や希望を持っている彼女たちは様々なちっぽけな問題に悩みながらも駆け抜けていく。
ああ、こんな高校時代があったなと自分に置き換えてみたりする。
世代が受け継がれていくとうことは
このようにエネルギーが受け継がれていくことなんだなと思った。
ハッピバースデーツーユー♪のコーラスが美しくリリカルな印象を残した。
せーの!「ドーン」せーの!「ドーン」と繰り返されるエンディングシーンが忘れられない。
と、ともに彼女たちの情熱がいつまでも続くといいなと思った。
時間は途切れることなく続いていく。