塩田泰造の新たな息吹を感じさせる傑作が登場した。
先日、亡くなったFさんが見たら何ていっただろう。
オトムギファンだったFさんのことを語りながら終演後の宴は続いた。
いままでにはないオトムギテイストが出た力強い作品となった。
本公演は約1年ぶりとなる新作。
カメラマンと伝説の歌姫が主人公。
言い方が「妙」かもしれないが、1980年代のつかこうへいの舞台のようだと思った。
(1970年代は未見です。)
様々な思いと関係が絡み、あるときは爆発する。
あらがえない運命に立ち向かい、もがき苦しみ
そしてそれを助けようと愛する人が寄り添う。
これは究極の愛の物語、夫婦の物語ではないか!と思った。
複雑な人間関係を理解しなくても楽しめる。
それはこの舞台と物語に大きなドライブがかかっているからなのだ。
推進力とでも言うべき見えない力が舞台全体を押し進めている。
往年のイケイケのカメラマン。
こんな人が居たかもしれないなあと思ってバブル時代の仕事に思いを馳せる。
エンタメ業界やCMなどを制作する映像関係のスタッフがそれに絡む。
人ごとではない関係がここから見えてくる。
プロデューサーとセットデザイナーそして売れっ子カメラマンの甥姪、
カメラアシスタント、声優、そして伝説の中国人歌姫とそのマネージャーなどが絡む。
舞台は上手に美術デザイナー(池田稔)のオフィス。
下手は売れっ子カメラマン(中神一保)の自宅兼スタジオがある。
舞台は同時進行的に進んでいく。
カメラマンの妻である長澤素子は、今、池田稔と一緒に住んでいる。
池田の事務所のデスクとしてパンやさんから連れてきた女性、
橋本美和は何と「北区つかこうへい」劇団に所属していたそうである。
彼女と長澤の関西弁がこの舞台に素敵なアクセントを与えている。
「いちころソング」とはその人の歌を聴くと一発でその人に愛情を感じ好きになってしまうというもの。
実際カラオケなどに行って歌を聴き
その素敵さに一瞬愛情が生まれてしまうという経験がある。
もちろんコンサートなどでもそう。
それは生で歌を聴くことも重要な要素ではないかと思う。
森実友紀の歌声が響くと舞台は一瞬凍りつく。
上手いのである。その歌のリアリティがこの舞台にさらなるドライブを与える。
そして「いちころソング」は歌のうまさもさることながら、
人間の記憶を一瞬で呼び起こす力があるのだなと納得した。
長澤の歌う「白いパラソル」♪はまさにそのような歌である!
と実感できる舞台だった。
塩田泰造の新たなステージの出発!
甘さに加えて強さと深さが加わった。
4月12日まで。