清志郎さんが亡くなった。58歳だった。
ガンと戦っておられたことはずいぶん前から伺っていた。
一度、お仕事を一緒にしたかった。
2006年に喉頭がんの治療に専念されており、復活ライブを敢行した。
しかし、昨年、転移が見つかった。
学生時代「シングルマン」というLPレコードを初めて聞いたのが最初だった。
大学の同級生に勧められるまま聴いて、そのアルバムは僕のお気に入りになった。
「スローバラード」はしばらく僕の定番カラオケソングとなった。
下手なギターをかき鳴らし自宅でRCサクセッションの唄を歌うのが好きだった。
「トランジスタラジオ」を聴くといつも出身高校の校舎が思い出された。
彼はメッセージ性の強い音楽を作り続けていた。
レコード会社が発売禁止を決めたものを自主出版で出したこともあった。
はちゃめちゃな清志郎さんは、晩年、自転車にはまる。
ロードを購入して日本中を走り回った。
そして、とうとう僕のヒーローズの一人が亡くなった。
しかし、彼の作った音楽は残る。
それは価値というものが残るという意味である。
価値が残ることは永遠性を獲得することである。
もういちど繰り返す。
「人間の生死において価値を付加することで永遠性を獲得できる。」
それが、ETV特集で鶴見俊輔が語った言葉の一部である。
この言葉に大変感銘を受けた。
マイミクのMさんがずいぶん前にこのことについて書いており、
うちの妻も昨日これを見て、メモをしていた。
妻のメモにはこうある。
「永遠のカケラ」(exactness is fake)
それを残すために人間は人民は生きているのではないかと語るのである。
鶴見俊輔は言う。
国家の記憶、国家の記録は残される。
しかし、重要なのはそこにいる人民が戦前から戦後にかけて
どう思ったのかどう感じたのかということの記憶を記録することが重要ではないかと語り続ける。
大きく目を見開いて、カメラをにらみつけるように強い意志で語る。
後藤新平を祖父に持つ、
鶴見俊輔は80歳を超えても若々しく熱い情熱がたぎっている。
そのことを見て、彼はいつまでも少年であるのだなと思った。
「ベ平連」のことを知る人が少なくなってきた今、
あの60年代安保の喧騒はいったい何だったのか?
人民は一体何を求めてデモを行ったのかということを記録しなければならない。
そのために鶴見俊輔はこうしてNHKの番組にも出たのだろう。
この番組は「あなたアンコール」で本日の10時から再放送される。
見逃した方は、NHKオンデマンドがある。
妻が、この番組で鶴見俊輔が虹のことを語ったところが印象に残っていたそうである。
その話を聞いて以下に引用する。
虹を見て奇麗だと思う。それはいくつになっても変わらない。
それは、あなたが虹の中に何らかの価値を見出しているからである。と、
そして、価値があるものはその人にとって永遠になる。
みたいな話だった。
滋味深い言葉である。