以前から評判だった、「柿喰う客」。初めての観劇。
毎公演ごとにポストトークがあることを知る。
本日のポストトークのゲストは柴幸男さんだった。
劇場に入ると壮大なセットに驚く。
舞台全体が前傾しており、左右に坑道や井戸などが置かれ、
錆びついた自動販売機や地面に大半が埋まってしまった鳥居や
粗大ゴミなどが散乱している。
舞台奥にトンネルのようなものがある。
おどろおどろしい雰囲気が伝わってくる。
枯れ木には、たくさんのおみくじが結ばれている。
そんな場所での「柿喰う客」の公演。
いつもとは違う大がかりな舞台装置だったことをポストトークで聞く。
この舞台は折り込みチラシの裏に、
作・演出の中屋敷法人が書いていることとほぼ相違ない舞台だった。引用する。
北東北の、山深き寒村、霧田村。
人を食い殺す“化け猫”伝説が残るこの村で身元不明の惨殺死体が見つかった時、
村人たちの運命の歯車は狂い始める。
(中略)
いろんなスリルがてんこ盛り過ぎて、もうマジでわけわかんねー!!
まさに、こんな舞台。
俳優たちはみんなキャラクター化されている。
ゾンビの村長がいたり、癒し系のメイドがいたり、るろうに剣心みたいな母親がいたり、
さらにはカッパのキャラクターなど荒唐無稽の登場人物たちが、
この小さなトラムの劇場で動き回る。
登場人物が総勢、26名!誰が誰やら、そして役が複数にわたる俳優もいるので、
何が何やらわからなくなる。
中屋敷はここで家族の話を描いたという。
確かに、綾町家という「過ち家」と言う意味が込められているのだろう家族の物語。
その母親と三人の子供と化け猫になっている父親との物語。
これは柿喰う客版の「父帰る」なのか?
それとも、怪談系おとぎ話?
タイトルの「悪趣味」通り、破たんしたキャラクターがたくさん出てくる。
セックスや暴力の満ちた世界がここで描かれようとする。
特徴としてステレオタイプで形式的、記号的であるということ。
これがこの劇団の特徴なのかどうだかわからない。
しかし、アニメやゲームを初めとするキャラが動き回るような
ステレオタイプな世界観を踏襲しているように見える。
それが表面的で薄っぺらいと思うのか、
その記号的なものから批評的にその世界を逆説的に描いているのかすらわからなくなる。
この劇団には、しかし、どこかしら魅力があるのだ。
俳優の力でも戯曲や演出の力でもない?
それは若さのチカラとでもいうものなのだろうか?
この世代の劇団にある独特な強さと魅力が、
本当の意味での成熟した馬鹿馬鹿しさとナンセンスさと面白さを兼ね備えた
劇団になっていくような気がしてならない。
今の時点では未知数。
が、しかし、この営みを続けていければ
必ずや「柿喰う客」のムーブメントは起こせるだろうと思う。
具体的には、間の研究が重要なのではないかな?と思った。
前半は、硬い印象があった。
しかしんがら、
後半、テンポが良くなりどんどん引き込まれていった。
あと1週間ある。頑張れ!柿喰う客!13日まで。
そして、何年も続けてください!