映画「パッチギ」「フラガール」の脚本家、羽原大介が主宰する劇団。
昭和芸能舎の14回目の公演。
以前、この劇団は新宿芸能舎と名乗っていたらしい。
そういえば、どこかでチラシを見たことが!
今回は、同じく脚本家をされているIさんのお誘いで一緒に見に行った。
IさんはNHKのドラマのお仕事で俳優の及川いぞうさんと知り合いとなり、
及川さんが出ているということで、見に行くことに!
及川さんがいてくれて、この舞台は魅力的になっていたことは間違いない。
劇中での、及川さんへの言葉
「はげちらかす!」
はこの舞台での名言だった。
何とはなく発せられた言葉で意味がないのかもしれないが
及川さんとセットになると思わず笑ってしまう。
舞台の自由さはそういうところにある。
昭和60年代の出来事。1980年代のバブルの頃の東京での物語。
羽原大介の脚本は本当に良く出来ている。
劇場に入ると、たくさんのお祝いのお花や差し入れが!
そこには多くのTV関係、映画関係の名前が多くみられた。
いつもの小劇場の劇団の身内からの差し入れが見られるものとは
また違う華やかな光景が拡がる。
六本木のディスコ「トゥーリア」の照明器具が落下した事件があったが、
そのエピソードなどが引用されている。
その事故は、1988年(昭和63年)1月5日のことだった。
当時の社会状況などが一緒に描かれ奥の深い物語になっている。
題名の通り長ぐつをはいたロミオと牛丼屋のジュリエットの物語。
彼らは築地で働いている。
ロミオは場内の魚河岸の次男。
ジュリエットは、ここでは何故か場外にあると仮定されている、吉野家1号店の店長の娘。
(実際の吉野家1号店は場内にある。)
昭和の歌謡曲満載のこの舞台は歌あり踊りありのエンターテイメントとなっている。
築地、月島のグループと対比的に描かれるのが、六本木のディスコの面々、
芸能界を目指して狭い関門を乗り越えようとしているものたちが集まる。
今も、六本木は変わらないのかもしれない。
と、ときどきそのような飲食店に行くと感じる。
20数名の俳優それぞれのキャラをきちんと出しつつ
この舞台を2時間強にまとめあげた手腕は並大抵ではない。
羽原の筆力のなせる技。
羽原はつかこうへいに師事していたと書いてあった。
なるほど、弱者への視点や激しく物事に向かい合うというようなところが
つかこうへいの影響なのかもしれないなと思った。
この舞台では並行して、築地の移転問題について語られる。
魚河岸の歴史と共に、今後どうなっていくのかがきちんと描かれ、
ああ、ちゃんと取材がされているなあ!と感心した。
今の魚河岸は日本橋から関東大震災を契機に築地に移転したそう。
その際に場外の店舗なども一緒に移動してきたらしい。
今回の豊洲への移転の経緯も面白い。
環状二号線と言われている、いわゆるマッカーサー道路の建設とともに
その終点である豊洲あたりに移転する計画は、
政治家と官僚と一部の金持ちの権益のために行われるとあって、
実際どうなのか調べてみたくなった。
しかしながら、移転候補地の豊洲東京ガス跡地の土壌からは、
その後大量の有毒物の混入が見られ、都はその土を洗浄して
安全な移転先にするという記事を読んだ。
2016年の東京オリンピックの決定によってどうなるのだろう?
築地のままでやっていこうという計画もあると聞いた。
生活している人と、行政の思惑と、様々な思いが交錯して
いろいろなことを考えさせるものになった。
最後、波除神社のお祭りのシーンがあるのだが、
彼らのはっぴに「負け組」と書いてある。
しかし、この人たちはみな実は、ハッピーなのではないか?と思った。
「負け組」とは、一体なんなのか?