「夢の城」ポツドール（＠新宿シアタートップス）

　脚本・演出、三浦大輔。
昨年の公演「愛の渦」で三浦は岸田戯曲賞を受賞。
今回はそのアンチテーゼとも言える舞台。
この舞台の脚本だけで再度、岸田戯曲賞がとれたら、
それはそれで凄い。
まるで、太田省吾のように。
今回の舞台は、いままで三浦が手がけた
手法やエッセンスが散りばめられている。
相変わらず、リアルなセットで、
しかもその散らかり方に驚く。
場所はアパートの一室。
多分８畳くらいのワンルーム。
上手に冷蔵庫と流しがあり、下手にはテレビが置かれている。
テレビにはテレビゲームがつながれている。
床全体には布団が敷かれっぱなしになっており、
脱ぎ捨てられた衣服やコンビニの袋などが散乱している。
ここに、いつもの三浦が描く、だらだらと、
当ても無く暮らしている若者たちが共同生活をしている。
髪の毛の色が髪型が、特徴的で、
ＴＡＴＯＯをしているものもいる。
男性５人、女性３人の８人。
そこで行なわれている日常を観客たちは
ベランダ側から覗き見をする
というような設定になっている。
その１日を追った舞台。
時間はＡＭ２時から始まり、
ＡＭ９時半、ＰＭ３時、ＰＭ６時、ＡＭ３時の５場構成。
三浦の演出は相変わらずシャープでキレがいい。
米国白人ラップグループ、エミネムの曲がテーマソング。
その大音量の中から、舞台は始まる。
目の前で繰り広げられている行為は、
知らずに見に来た方は驚き目を剥くかもしれない。
しかも、そんなに大きくない小屋である。
数メートルから１０メートル先で行なわれているので
印象は強烈である。
テレビや映画との違いを強く感じるだろう。
しかし、彼らの行動を見続けていると、
これこそが本当にリアルなことなのではないかと思えてしまう。
それくらい、演出が上手いことの証かもしれない。
ポツドールを語る際に「リアル」という言葉ではない
何かで語ることが出来ないだろうか？
と以前演劇好きな仲間たちと話あったが
未だ適切な言葉が見つからない。
手法は相変わらずの強烈なポツドールだが、
昨年の「愛の渦」あたりから、明らかに変化している。
以前は、全く救いの無い中、唐突に舞台は終わりを告げていた。
しかし、三浦自信が舞台を通して「救い」の記号を入れたいと
思い始めているのではないだろうか。
そんなエピソードが柔らかく僕の気持ちに伝わってきた。
（以下ネタバレ）
全員で鍋を食うその際に一人のギャルが
♪「キャン・ユー・セレブレイト」「カノン」
「エリーゼのために」を電子ピアノで弾くシーン。
そしてラストシーンで安藤玉恵が嗚咽し涙を流す。
一人の男がそれに呼応するように、
アパートの一室をスピードスケートのように回り出す、
その後ろについて回り出す別の男。
掃き溜めに鶴ではないが、
何かキラッと光るモノを見せてもらったようで
「グッ」と来るものがある。
舞台は相変わらず唐突に終わる。
幕が下り、作。演出、三浦大輔と投射される。
カーテンコールも拍手も無い。
エミネムの曲がまた、大音量で流れ出す。