日曜日の六本木の夜。普段の六本木と違って人が少ない。
外国人やキャバクラ嬢の呼び込みのない
静かな六本木は、なかなかいい。
六本木通りを西麻布の方へ歩く。
六本木ヒルズを越えて、下り道の傾斜が
大きくならないところの手前に、
スーパーデラックスというフリースペースがある。
雑居ビルの地下一階。
ここで岡田利規は、数年前、
カナダの演劇ユニット、「PME」の公演を見たことに
触発されて書いた戯曲が「三月の5日間」。
第49回の岸田戯曲賞受賞作品である。
昨年、初めて、チェルフィッチュ公演「目的地」を見た。
この作品は、港北ニュータウンに住む、若い夫婦の話。
この夫婦たちの話と平行して、
港北ニュータウンの開発の現代史がスクリーンに投影される。
今回も構造自体は似ている。
舞台の方法論もチェルフィッチュのいつものスタイル。
しかし、今回のこれは「目的地」を遥かに凌駕した、
素晴らしいものになっていた。
確かに、岸田戯曲賞を受賞するだけあって、
台詞が上手く、物語としても面白いものになっていた。
六本木のスーパーデラックスでライブを見た、若者たちと、
それと同時進行的にかかわった若者たちのエピソード。
ここで、同時並行的に語られることが、
米国軍のイラクへの攻撃が開始予告されてから、
5日間の話であるということだ。
その時、渋谷で反戦デモが行なわれる。
出演している若者たちは何らかの方法で、
その反戦デモのことについて語る。
或いは、参加している。
そのひとつの共通事項に絡んで、
出会ったばかりの男女が円山町のラブホテルで4泊5日の旅をしたり、
その男の子の友人が彼について語ったり。
また、別の友人が映画館前の出来事を語ったり。
そこで出会った女の子が自分の部屋で、
自分のことを語ったりする。
この語り口が妙にリアルで、現代的。
文脈の切れ目がないっていうかあ、
話がどんどんつながるっていうかあ、
また全然別の話になっちゃったりするんですけどね。
や、するじゃないですかあ?
でも、それもしょうがないっていうか、
こんな喋り方しかできないって言うんですか?
でも、みんなこんな喋り方なんで
本当に伝わってるのかどうか全然わかんないんですけどお、
岡田さんのポストトーク聞いたら、
あ、まさしく、この人の喋り方がこうなんだ、
みたいなことを発見しちゃったり、なんか、
したりなんかして。
なんか、変だとは自分では思ってないっていうか、
何が喋りたいっていうのがわかないじゃないですかあああ?
そんなんで、コミュニケーションの不在とか、
言葉の不在みたいなことを岡田さんは
描きたかったんじゃないかあああ?
なんて、なんか、思ったりしてる感じも微妙なんですけどおおお。
このような、語り口で、
演技かダンスかなんだかわからない動きが繰り返される。
そのリズムが心地よく、
繰り返される俳優の動きと喋りがシンクロして、
独特な空気感を醸し出す。
そのことを面白いと思うかどうかで
この舞台の評価が決まるのかもしれない。
初演は天王洲スフィアメックスで2年前。
今回はまさしく、物語の起点となった場所を会場にしての公演。
再演なだけに役者に台詞が完璧に入っており、
動きも面白く、戯曲それ自体が面白い。
今年の、冒険的な傑作のひとつである。
表現方法は違うのだが、
昨日の「ポツドール」とも似たところがたくさんあった。
そのことについては、また。
