サントリーホールでコンサートがある。行きます!
即答していた。
あのホールでオーケストラの音を聴くのはこれで二回目。
ホールの中に身を浸し、音の中に埋もれると本当に気持ち良くなる。
この音の響きは何だ!と思う。
オーチャードホール以上に美しい響きがもたらされる、気がする?
このホールでのフルオーケストラはその体験だけでも貴重!
そして、中川俊郎さんのコンサートである。
現代作曲家として有名な彼は、
実はTVCMの音楽や編曲を数多く手掛けている。
実際、一度、CM用の音楽を作っていただいたことがあり、
音楽スタジオで中川さんが音楽ディレクターのWさんとああでもない、
こうでもないと話しながら、
中川さんがキーボードを弾く姿が忘れられない。
彼の少し猫背の後姿で鍵盤に向かって集中する姿が何ともチャーミングだった。
サントリーホールではこうした作曲家の個展と称したコンサートを
何回も続けているのだなということがわかる。今回で29回目。
そういえば中川さんはサントリーの「烏龍茶」のCM音楽の作曲・編曲を
ずーっとやり続けていらっしゃる。
今回は東京都交響楽団の演奏、飯森範親の指揮でこのコンサートは行われた。
飯森さんは中川さんと同じ桐朋学園大学音楽科の出身。
指揮科と作曲科。中川さんは今年で51歳になる。
ひょうひょうとした彼の姿は、
一緒にいったYさんもおっしゃっていたように確かに三谷幸喜を彷彿とさせる。
決してふざけてはいないのだろうが、その雰囲気と態度から醸し出される姿は、
まさにコメディアン。
しかしながら現代音楽というのは、そのようなものかも知れないと
今回のコンサートを聞いて思った。
既存の価値観を疑い、破壊しまったく違うアプローチで音楽に向き合う。
そんな印象を持った。
そのたくらみを中川さんはスコアに記載するのだろう。
ある楽曲などはほとんど白紙のスコアで
時間軸に応じた各パートの出番だけが書いてある。
あるいは、時間軸に応じた各パートのイメージが三角や丸などの記号で描かれているそうである。
これを、東京都交響楽団の演者たちは
それぞれに解釈してインプロビゼーションとして奏でていく。
その演奏が複雑に絡み合って独特な不協和音を奏でる。
これはまさに渾沌の世界ではないか?
それはドタバタ喜劇にも通じるものかも知れない。
演者は思い思いの演技をそこで繰り広げる。
場所を移動してもいいし、楽器を普通に使わなくていいし、
さらに缶コーヒーの缶を鳴らしても、スコアを破り捨てても構わない。
時々、その混沌の中から調和が生まれてくる。
それを発見すると嬉しくなり、またそれが混沌の世界に戻る。
スラップスティック的な構造がこのコンサートに現れる。
それが、中川さんの狙いだったのだろうか?
毎回違う試みを聴けるという一回性という意味でも、
貴重なライブエンターテイメントに立ち会ったという気になる。
音というものを強く意識するものにもなっているという発見があった。
また、「影法師―F.シューベルトの同名の歌曲その他による」では、
断片のようにクラシック楽曲の一部が切り取られて音楽の中に登場する。
事前にこのようなフレーズですよ!
という説明があり、演奏が始まると全く新しい構成と構造を示すことが興味深かった。
この日の、聴衆は錚々たる広告業界の人々が出席されていた。
中川さんが僕の住んでいる場所から最も近い
中学校「市川市妙典中学校」の校歌を作曲されており驚いた!