劇団「青い鳥」は、創立されて何と35周年を迎えた。
1974年に創立。大阪万博の4年後!
あうるスポットのロビーには過去の「青い鳥」の公演チラシが展示されていた。
僕は、東京に出てきた年に初めて「青い鳥」を見た。
1985年のことである。
その頃から青い鳥のチラシやパンフの挿絵に、
漫画家の高野文子のイラストが使われていたことが記憶に残っていた。
80年代の青い鳥は、まさにブームに沸いた劇団だった。
チケットもなかなかとれず、その頃は
作・演出、市堂令と称して、劇団員みんなで台詞を紡いで舞台を作っていった。
あの頃の三人を中心にした還暦近くなった劇団員と
若手劇団員たちがそれに加わって、
新たな「青い鳥」の舞台を見ることが出来た。
あの頃の三人とは、天光眞弓、芹川藍、葛西左紀。
30年以上一緒にやってきているので息がぴったりとあっている。
しかしながら、彼女たちだけだと、あの頃と同じで何ら変わらない。
それを懐かしいと見る見方もあるのだろうが、
それは変化をしてなかったということの表れともとれる。
そこに新たな俳優、近内仁子、森本恵美が加わることによって
現在の「青い鳥」が見られるようになった!
世代を超えての女子たちの交流!
その結果がこの舞台にあらわれていた。
59歳の天光は意を決して、スーパーマーケットの求人案内に応募する。
求人チラシには年齢59歳までと書かれてある。
天光、最後のチャンス!舞台はスーパーマーケットのバックヤードと休憩室。
ベテランのパート従業員、葛西。
そして店長の芹川が天光の面接に応対する。
その日は台風が接近しており、この地区では厳戒態勢が敷かれていた。
様々なトラブルが起こりなかなか面接は進まない。
そして、夕方から夜にかけて台風が接近。
このスーパーマーケットが浸水しそうになり、
みんなで土嚢を積み浸水を食い止める。
深夜まで働いた5人の従業員と天光眞弓たちは夜食にカップラーメンを食べ、
毛布にくるまりながらこの休憩室で取りとめもない話をしながら夜を過ごす。
特別な夜である。
台風の夜。
12時を過ぎ、天光は60歳を迎える。
青い鳥らしい、少女の頃の思い出と気持ちがいっぱい詰まった舞台。
過去の思い出話に花を咲かせる還暦を迎えつつある少女たち。
高野文子の漫画の名作、「田辺のつる」を思い出す。
人は歳をとるとまた、子供の頃のようになっていく。
この少女性とおばさんの持つバイタリティがないまぜになっているのが面白い。
80年代に見た、いくつかの青い鳥の公演が蘇ってくる。
そこに若い森本、近内が新たな華を添える。
素直で優しい人たちばかりが出てくる舞台。
最後の方で、突然「ゴドーを待ちながら」をモチーフにしたシーンが挿入される。
あれは、何だったのか?天光は還暦を迎えるまでゴドーを待ち続けたのか?
そして、彼女の待っていたゴドーとはいったい何だったのか?
そして彼女たちは自らが動くことでしかゴドーには出会えないと思った。
自らが新たなスタートを切るのに年齢は関係ない。
60歳のノラ(「人形の家」のヒロイン)がいてもいいのではないか?
などと思った。
25日まで。