PPPPも今年で10周年を迎えるそうである。
本公演はその記念公演。
ペンギンみたいな独自な表現スタイルを貫いている劇団は他になく、
それも倉持裕の才能に負うところが大きい。
独特なねじれを何気ない会話から組み立てていく。
ここに出て来る登場人物はおかしな人ばかりじゃないか?と思う。
気がふれた人たちが集まっているかのような錯覚に陥る。
舞台は会社の備品などを置いておく倉庫。
神谷町から近い場所と言っていたので、港区の会社なのだろう。
それにしては、古い事務所で窓外に緑がある。
古くからある老舗の会社なのだろうか?
その倉庫にいるのが遠藤(小林高鹿)と熊田(玉置孝匡)。
二人が椅子に座っている。
脱力系の会話を熊田が遠藤に話している。
雪かきをしたときのことを面白可笑しく伝えたいのだが、
面白ポイントがうまく話せず、そこをはしょった状態で語る。
聞いている遠藤は、まったく面白くなく、
喋っている熊田だけが思いだし笑いをしながらそのことについて話している。
こうした変なシーンが次々と積み重なって表現される。
遠藤は会社の会議中に突然滝沢(吉川純広)を殴ってしまい、
この倉庫で自体が収拾するまで待機することになった。
しかも遠藤以外がいない時には鍵がかけられるという状態に。
登場人物の足元は白い絵の具が塗られている。
これは、どういう意味だったのか?
終演後も話し合ったのだが、幽霊で足がなくなったものたちの?
古典落語のネタに出てきそうな話。
そこに、絡むのが遠藤の同僚である野村(近藤フク)と
遠藤の中学時代の同級生の白井(ぼくもとさきこ)。
5人だけしか出てこない舞台。
そこで、彼らが繰り広げる独特なシュールな笑いがこれでもか!と続く。
倉持さんの自由さが爆発する。
意図して面白くしようとしているのか、
その状況を作ることが楽しいのかよくわからない。
しかしながら観客はそのシュールさやバカバカしさに
クスクスと笑い始め、もはや後半になると、
どっか―ん、どっか―んと馬鹿笑いになっていく。
人のきもちがずれたりコミュニケーションがずれたりする
その気持ちの奥の狂気みたいなものが見えてくる瞬間がある。
そのココロの奥に秘められたどろどろとしたものを取り出そうと
しているかのように。
見ている方も自分の中にある狂気や邪悪なものに気づき、
いやあな気持ちになる。
その気持ちが舞台できちんと表出されてていることがすごいと思った。
人間の狂気を感じることで乾いたお笑いの舞台がホラー映画のようになる。
舞台の暗転の時に時間が一瞬戻ってライティングが変わり、
登場している俳優が遠藤(小林高鹿)の顔に白いドウランを塗り足していくシーンがあった。
そのシーンは場面転換のたびに繰り返される。
あの行為はいったい何だったのか?
あまりにも自由なPPPPの公演は
見る人に多くの笑いと????を与えてくれることだろう。