約1年前に幻冬舎から出た本。
本書は幻冬舎のビジネスマン向け雑誌「ゲーテ」に
連載されているものを加筆したものだそうである。
4月1日は新入社員の入ってくる日。
毎年、この日にサントリーの新入社員諸君へ向けた広告が掲載される。
最近は伊集院静が文章を書いている。
山口瞳から倉本聡そして伊集院静。
時代は変わっても普遍的なことを先輩から語るというトーンは変わらない。
書き手が違うので口調は変わっても言っていることはかわらない。
ようは自分を持って、きちんと生きようということに尽きる。
なぜ、このことを書いたかと言うと、
本書は、この「新入社員諸君!」に似たようなテイストを持っているから。
村上龍は多くのビジネスの経営者たちに会っている。
彼がホストを務める「カンブリア宮殿」は
僕も大好きで毎週HDDに録画して週末に見ている。
村上さんが対談を終えて、その経営者に向けてのコメントを書くのだが、
それがまたいい。
その人の魅力を短い言葉で簡潔に表わす。
すごいな!と思う。
村上龍は小説家であるとともに優れたコピーライターでもある。
開高健や山口瞳がそうだったように。
ここで、村上さんが言い続けていることで共感することがある。
それは仕事と遊びの区別がつけられないところ。
はい!ここまでが仕事、ここからは別の自分という世界がはたして可能だろうか?
それを村上龍は趣味という言葉に置き換える。
趣味を持つことはなんら生産的なリスクをともなった
活動をしないということであると村上龍は規定する。
その文脈の中で語ると、趣味は必要ないものになるのだろう。
全てのことが懸命に生きることにつながり、
そのことを村上龍は仕事を初めとした言葉に置き換えているのだろう。
村上龍はこのように書いている。
真の達成感や充実感は、多大なコストとリスクと危機感を伴った作業の中にあり、
常に失意や絶望と隣り合わせに存在している。
と。趣味はそうではないのは理解できる。
村上龍は自らの行うテニスや水泳や犬の散歩は気分転換であり、
趣味ではないと言い切る。
また天才とはという話で、後世に名前と影響力を残す作家はたいてい多作だし、
また科学者の仕事は「体系的・重層的」であることが多い。と。
また、リラックスできてかつ集中して仕事が出来る人は、
実はオンとオフの区別がない。
納得。
結局、本当に大切なものは何かを考え優先事項を決めて取り組んでいくことである。
と村上龍は本書の中で何度も言っている。
それは限られた人生を目いっぱい生きて
いこうとするための具体的な提言であるのだな!と思った。