土曜日、夕方、18時半からのインタビューまで時間が空いたので、
新宿で何か映画を見ようと思った。
最初「渇き」という韓国映画を見ようと思っていたのだが
土曜日は18時40分以降でないとやっていなく、
アカデミー賞受賞作「ハートロッカー」に変更しようとしたら、
何と最前列しか空いてなく、それもあきらめ、
時間的に丁度いいということで、この映画を選択。
先日、民主党が外務省の沖縄に関する密約があったということを
公表し話題になったあのころのこと。
新聞記者と密約の情報を記者に渡した外務省審議官事務官の女性が裁判にかけられる。
その裁判の傍聴を続けていた澤地久枝が書きあげたドキュメント
「密約―外務省機密漏洩事件」(@岩波現代文庫)がベースになっている。
本作品は最初テレビ映画として撮影されたらしい。
1978年に日本テレビ大賞を受賞。監督は千野皓司。
この映画を契機として彼はノンフィクションドラマの方向へかじ取りをしたらしい。
それまでは、石立鉄男の「パパと呼ばないで」などの演出をしていたらしい。
杉田かおるの子役時代を撮影していたんだな。
ちーちゃん役の杉田かおるは今、45歳になった。
外務省に密約書類はなかったとされた事実は
こうして、正式に覆されることとなり、
外務省の機密文書は確かに存在し、それが漏洩していたことが判明した。
昨今のデジタル化で、情報漏洩の問題が身近なこととなる。
そこには人的な行為やミスが必ずあるから
漏洩が起きないことはないという前提で取り組まなければならないことが良く分かる。
沖縄返還の際の補償問題の負担を日本国が米国に代わって
行ったという事実がここで明らかにされる。
テレビの公開から32年、映画館での公開から22年が経過して、
補償負担の事実が明らかにされ、映画の再公開が決まった。
観客は70歳代前後と思われるシルバー層ばかり。
彼らの若いころの記憶が蘇る事件なんだろう。
若者はまったく入っていなかった。
北村和夫演じる記者と吉行和子演じる外務省審議官事務官。
終戦で年上の男と結婚した吉行の夫は結核をわずらっている。
北村は外務省記者クラブ所属となり審議官から情報を得るために吉行に声をかける。
結核の夫との男性関係が途切れている吉行は、
北村に惹かれていき二人は関係を持つようになる。
まるで昼メロを見ているような展開。
吉行の妙に色っぽい様子が時代を超えて浮かび上がってくる。
テレビで放映されたものなので実際に色っぽいシーンなどないのだが、
そのことがより深く情念みたいなものを浮かび上がらせる。
この二人の関係とそれによって国家機密の漏洩をしたという事実を
裁判では裁かれることとなる。
それを膨張している澤地と思われる作家(大空真弓)の視点で描いている。
結局、「密約」は正当だったのか米国からの圧力だったのかは
裁判でまったく明らかにされないまま終焉を迎える。
その頃のアメリカはベトナム戦争を行っていた。