青年団演出部でありハイバイの主宰をしている岩井秀人が、
古典作品をベースにまったく違うものを作りだした。
どこまでが古典なのかわからなくなるくらいに変更が加えられ、
これはもはや岩井さんのオリジナル作品なのでは?
と思えるような仕上がりであった。
そして、その仕立てが本当に笑える。
どうして、こんなことを思いつき、ここまで笑えるように昇華できるのだろう?
俳優と演出の協働がきちんと出来ていないと、
ここまで面白いものにならなかったのではと思った。
お休みの日のマチネということもあって満席。
通路にも全て椅子が置かれる。
扇田昭彦さんがいらしていた。
今年70歳になるとは思えないその活動ぶりと、
どんな舞台にも足を運ばれる行動力に驚く。
演劇を50年以上見続けて来た人の話は、
映画を見続けて来た淀川長治さんにも似た凄みを感じる。
まずは、岩井さんが舞台に登場する。
携帯電話のアナウンスとともに今回の舞台のあらましについてお話をされた。
古典落語を原作とした二つの作品が出来た。
それは、古典落語を原点としたというよりも発想のてこみたいなものが、
それだったというような、曖昧ですいません。でも、そんな感じ。
1本目は「東海道四谷怪談」。
このお話と円朝の「牡丹灯籠」を混同していたという話が
折り込みに書かれており、自分自身もそうだったと思い、
恥ずかしくなりつつも思わず笑ってしまった。
伊右衛門が殺人を繰り返すという暗黒小説のようなあらすじである。
それがこんな舞台になるのか?というのに驚く。
同じストーリーが二度繰り返される。これが面白い。
付き合っている彼氏のところにやってくる彼女とそのお父さん。
彼女はその場を去り、お父さんと彼だけで話が始まる。
娘と付き合ってはいけないとお父さんは言って、そのままそこを立ち去る。
ここから荒唐無稽な話が始まるのだが、
それを二度見ることによって様々なネタばらしがわかり、
面白く奇妙な世界に入っていく。
必見です。
とにかくあまりの変さに笑えます。
続いて、「落語・男の旅(大阪編)」という男三人の旅物は
落語にはよくある話で、そこで女を買ったり、
宿に泊まったりなどの珍道中が描かれる。
その基本構造だけを借りながら
岩井さんは大阪にある飛田新地に行ったときのことをこうした形に仕立て上げた。
男三人で飛田新地に行き、好きな女の子のいるお店に
それぞれが入っていくという仕立て。
初体験の三人の様子と、それ自体が日常になっているお店の
やりて婆さんとお店の女の子の対比が笑える。
これもまた奇妙にデフォルメされており、
ほんまにそんなことがあったんやろか?
とさへ思えるようなエピソードが語られ、
そのまたまた変さに思わず笑ってしまうのである。
一人数役をこなしそれが同時進行で行われる演出もいい。
さらに男三人旅の設定なのに、女優の石橋亜希子(青年団)が
男の子の役で登場する。
その微妙な性差を超えた表現がまたいい。