素晴らしかった!G.E.レッシング作、
1772年初演の古典劇である。
演出はドイツ座所属のミヒャエル・タールハイマー。
ストーリーは古典劇だけあって情念や欲望の渦巻く簡単な話。
公爵が、別の伯爵と結婚が決まっていた娘「エミーリア・ガロッティ」を好きになり、
侍従の策により、伯爵は殺される。
公爵の元恋人は、エミーリアの父に、娘を誘惑した公爵に復讐するように仕向ける。
公爵を殺した父親は娘と向き合う。
エミーリアは父親に自分を殺してくれと頼む。
なんとも凄まじい話である。
しかし、演出は観客たちも、
そのストーリーを完全に知っているだろうところから始まっている。
左右対称な、扇状になった舞台。奥に出入り口がひとつ開いている。
壁の高さは8メートルくらいだろうか、床と同じ、
白っぽいシナベニヤで覆われている。白木のシンプルなセット。
男は仕立てのいいスーツ。女は身体の線が美しく出る
上質な生地のワンピースを着ている。
まるで、エルメスか何かのファッションショーのような感覚。
高野しのぶさんがレビューで、「JIL SANDER」と語っていたが、うんうんと納得。
役者たちが背が高くプロポーションがいいので際立つ。
そこに映画「花様年華」の挿入曲「夢二のテーマ」が繰り返し繰り返し流れる。
時には同じフレーズを短く繰り返したり、長くメロディを聞かせたり、
カットアウトさせたりカットインさせたり。作曲は梅林茂。
音楽の影響もあるのかもしれないが、
僕はウォンカーワイの映画「花様年華」に通じるものが非常に多かったように感じた。
男女の関係、そしてその関係が結ばれにくいものであるということ。
そこはかとなく漂うエロティックなムード、
チャイナドレスはワンピースに置き換えられている!と。
しかし、この日のアフタートークで演出家ミヒャエル・タールハイマーは
その類似を認めていたが、たまたまそうだったと語っていた。
初演後に、映画のことを知り、見たら類似点が多数あったと。
同じようなスタイルが出てくるのは世の常なのか?
とにかく全編通じてスタイリッシュなヴィジュアル構成が行なわれ、
音の構造も計算されていてキレガいい。
台詞が異常に早く話されたり、振付と思えるようなしぐさが
頻繁に登場する。
そのことが、さらに、斬新さとスタイリッシュさを加速する。
舞台自体は1時間20分。濃密で緊張感あふれる、素敵な舞台だった。
3回のみの日本での公演はあまりにももったいない。
しかも観客席は半分くらいしか埋まっていなかった。
主催者はどのように感じているのだろうか?ほんとに残念!