副題には「ヒトの本能から広告を読み解くと」とある。
本書はあまたある広告関係の書籍と一線を画している。
それは、広告の起源は人間の本能の中にあり、
生物学や心理学、認知心理学、哲学などを駆使して
人間とはの根本を考察しながら、人間の欲求みたいなものを
探ろうとしているところ。
この対極にあると思われるのが
「広告コピーってこうかくんだ!読本」谷山雅計(@宣伝会議)。
これはものすごく実戦的な部分を具体的に、
「ものの考え方」というところから書き起こされていた。
小霜さんの本書は逆に実戦的にするためには
どのような態度や考えで物事に接していかなければならないのか?
という根本のさらに根っこが書かれている。
そのため、参考文献には広告関係というよりも
様々なアカデミックなジャンルのものが挙げられていた。
リチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」、
「進化と人間行動」「認知心理学―知のアーキテクチャーを探る」
「やわらかな遺伝子」「心の仕組み」「裸のサルの幸福論」
「貨幣の哲学」「資本論」などなど。
大学の先生が論文を書くために用意されたかのような参考文献が並んでいる。
人間は遺伝子を残すための動物的な部分が必ずある。
そのルールに従ってヒトへの要求喚起を行うことで彼らの欲望は満たされる。
それは物質的なものだけにとどまらず、達成感や満足感などの
心理的なものにまで言及される。
その気持ちの部分と本能の部分がわかちがたく存在しているのが人間なのだ!
という前提に立っている。
小霜さんのヒトを見るまなざしは優しくて柔らかい。
どうしようもないところも含めて全てが人間であり
それを容認するところがまず前提にある。
以前、ディレクターのYさんとお話していて、
教えて頂いた言葉「包摂性」というものを再び思いだす。
それをあらかじめ持ちながら生きていくという前提が清々しい。
お子さんが3人もいらしゃるので、子供たちと「わーっ!」と生きている
現実がその想いを強くしたのだろう?と想像した。
一番重要なのは売りの仕組みを仕掛けるのに理屈ではない
それを超えた本能に訴えかけることが大切です。
と何度も言葉を変えて述べられているのが印象的だった。
その訴えかけるポイントは長年の経験に裏打ちされた直感にある!
ということも興味深い。
逆に経験の少ない人の直感はただの思い込みの恐れがある、
という言葉はリアリティのある箴言として受け止めた。
プロとしての直感力を鍛え続けることが大切。
納得!
そのためには毎日、いろいろな角度でプレゼンや制作業務をこなしていく
ということが大切になるのかな?と思った。
そして、本書は文章がこなれていてカジュアルで読みやすいのが、またいい!