アテネ・フランセ文化センターにいくと、
アカデミックな気持ちになる。水道橋と御茶ノ水の間。
線路脇から少し入った高台に、それはある。
吉阪隆正の建築。ル・コルビジュエの弟子だったらしい。
校舎は1962年に完成。僕と、同い年ではないか!
建物自体は老朽化してきているが、
当時の斬新なデザインは健在である。
アテネ・フランセの前の「とちの木通り」は並木がきれいで、
人影も車も少なく気持ちがいい。
この通りは西の起点がアテネ・フランセ。
東へ進むと明治大学付属高校を過ぎ、
山の手ホテルの近くまでその通りは続く。
ここは、いつも奇特な映画の上映をしてくれるので有難い。
但し、残念なことに日曜日は完全に休みである。
ファスビンダーの映画を初めて見たのは、
学生の頃「マリア・ブラウンの結婚」だったように記憶している。
当時、女優のハンナ・シグラがとても美しく色っぽかった。
その後、「ベルリン・アレクサンダー広場」という
テレビシリーズの一挙上映を見に行った。
その時に、映画配給などをしているSさんにばったり遭遇。
ファスビンダーがいかに素晴らしいかを、
Sさんは延々と語り続けた。
その印象が強かったので今回の上映に足を運ぶ。
もちろん、Sさんからのオススメメールが公開の直前に入ったことが、
大きな後押しになっている。ファスビンダーは奇妙な作家である。
カルトと言うといいすぎだが、画面から滲み出てくる
退廃的なエロチシズムは何だろう?
特にエッチなシーンがあるわけでなく、それにもかかわらず
妙にエロい感じがするのだ。
情事がらみのストーリーが多いのは確かだが、
直接的にそれは表されない。
そこを魅力と思えるかどうかが彼の作品が
好きになるかどうかのひとつのような気がする。
ファスビンダーは19歳で監督デビューし37歳で早世した!
その早すぎる才能は、独特なものを生み出している。
演出は時々どこか不自然である。
これでいいのか、とつっこまれるところが何箇所も出てくる。
しかしながら、そんなことはお構いなしに撮り続けている
エネルギーが画面の中から溢れ出ている。
しかし、それは力強いものではなく、
どこか退廃的でダルな感じなのだ。
ファスビンダーの移動撮影は印象的である。
特に、二人の俳優が歩きながらカメラが延々
とその会話をフォローしつつ捉えている部分が頻繁に出てくる。
また車からの移動撮影や空撮での移動撮影などもときおり出てくる。
そういった、コンプレックスのある若さのようなものを
表現している作家としてファスビンダーは特異な存在ではないだろうか?
ファスビンダーが大好きなSさんは、川島雄三監督も大好きである。
今回のセレクション上映を見て
その秘密が何となく理解できそうな気になった。
