昨年5月、さいたま芸術劇場でやった演目の、
スパイラルホール版。
僕がキノコを始めて見たのが、2002年3月、
丁度4年前の、原美術館での「フリル・ミニ・ワイルド」という公演だった。
とにかく衣裳とロケーションと音楽と美術が相乗効果であいまって、
とっても良い公演だった。さて、今回は?
もちろん今回も、キノコは女の子の世界を描く。
も、何のてらいもなく。
今回、思ったのは、あ、これは、小学校低学年くらいの
女の子の頭の中をダンスにしたものなのね、ということだった。
舞台はポップアート的な背景と小道具が
そこかしこに置かれている。美術はモリオ。
背景は、ジャングルブックのような、或いは、ドリトル先生のような世界。
それは、ファンタジーとして捉えられるジャングルの世界である。
その舞台に、ダンサーたちはまるでジャングルのいろいろな動物のように、
様々な動きで現れる。ジャングルでのダンス登場篇が終わると、
小道具の置物が裏返される。
さらに、大きな飛び出す絵本のような小道具が運ばれて来て、
舞台上に置かれる。それは、まさしく、おままごとのお部屋のセット。
スケールが小さくて、かわいい椅子や机、ベッドなどが置かれている。
まさしく、こ、これはリカちゃんハウスではないか!
その小さな、私だけの幸せな空間と思われるミニチュア部屋で
銘々のダンサーたちが踊る。
僕は妹がいたので何となくこの世界観は理解できた。
しかし、実際の身体には届いてこない。
ダンスの中盤くらいで、歌のコーナーがある。
キノコらしい素人っぽい、歌に乗せてダンサーは踊る。
主宰の伊藤千枝が歌った後の、5人でのダンスが圧巻だった。
5人のダンサーがそれぞれの動きをするのだが、
何人かの動きがシンクロする。それが時間とともにずれていくのだ。
例えばAとCが同じ振りで踊っているとおもったら。
今度はAとDが同じ踊りになり、
CはBとEと同じ踊りになるというようにずれていく。
その、ずれていく感じが上手くいっていたので、
見ていて気持ちよかった。
キノコは独特なダンスパフォーマンス集団である。
どこか素人っぽいところがあり、
その学園祭的なノリが好きな人は好きになる。
また、このガーリーな世界観を共有出来ないと
厳しいものがあるだろう。
これらを「かわいい」ものと感じられる感覚が突出した集団。
独特でオンリーワンなダンスカンパニーである。

(写真)珍しいキノコ舞踊団HPより