山﨑隆明さんのプロフィール。1962年京都府生まれ。
1987年日大芸術学部卒業、同年、株式会社電通入社。
2009年まで電通関西支社クリエーティブに。
2009年ワトソン・クリックを中治さんと設立。
今年48歳のクリエーティブディレクターである。
「右脳で発信し感じられる広告を作りたい!」
これが山﨑さんの、この日語られた全てのことである。
そうしなければテレビコマーシャルはチャーミングなものにはならず
人の記憶にさえ残らないと。
若いころ山﨑さんはクライアントのオリエンに応えるべく広告を作った。
その時は担当者にものすごく喜ばれたのだが、
その広告が一向に世間の評判にならなかった。
その後クライアントさんからは手のひらをかえすように
厳しい言葉をいただいたらしい。
このことを山崎さんは語り、やはり世の中の人に
いかに気付いていただけるCMを作るか!ということを実感された
という言葉がマクラに来る。
山崎さんは彼の作る「ばかばかしい面白いCM」とは裏腹なのか?
誠実に真面目に真剣に言葉を選んで創作の過程を話される。
その創作の過程は忍耐の連続である。
「ホットペッパー」のアフレコCMで録音した回数800テイク!
どうしたらそれだけの回数を重ねて最上のものを選び出せるのだろうか?
しかも、あの声自身が山崎隆明本人のもの。
誰も責められず、コツコツと自分の声の録音を重ねる。
録音が終わったらブースから出てきて演出の八木さんたちと詰めていく。
その繰り返し。
努力が面白さに変化出来るのだということをこうした事例を聞くと教えられる。
一番幸せだったのはこうしたアフレコ企画をしようと
ある映画を借りてきてその映像をみながら
自宅のリビングで音を消して自らアフレコをし笑い転げていた1日だったそう。
その日は深夜2時ごろから朝の6時頃までその作業をやり続けていたそうである。
寝室で寝ていた妻も時々笑っていたらしい。
しかし、それを続けることは並大抵のことではない。
同僚の中治さんが時々言われるらしい、
「みんなこんなにしんどいのかな?」と。
ある高みに登って行こうとする志のある人たちは、
みんなそうなのかもしれない。
「ホットペッパー」のアフレコCM集を見てさんざん笑った後、
この雑誌は銀座のOLさんなんかが、
自分のブランドじゃないと思うようになったという経緯があり、
スヌーピーのキャラクターを使った「Hot Pepper 女子会」
というキャンペーンが雑誌のリニューアルとともに始まった。
木村カエラありきで唄ものを考えようと。
意味のない唄がいいなと思い「ハ」行で唄を作ろうと思い、
品川から京都へ向かう新幹線の中で携帯電話の録音機能を使用して
ひたすら唄を録音していたそう。
耳から聞こえてくる感じが重要だと言うことで
録音したものを聞き、また録音することを繰り返す。
全てのことを試してみようとする山﨑さんの
執念にも近い作業は科学の実験にも似た試みだなと思う。
そこから最善解を見つけていく作業なのだ。
そうして昨年のACCの金賞を獲得した
木村カエラの「ホットペッパピプペパポペパペポピプペポ!」のCMが生まれた。
KINCHO、日清、タマホーム、マンダム、サントリー、明治製菓、ユーポスなどの
CMを見せていただく。
印象に残った言葉はどんなスタッフとやりたいですか?との問いに
「失敗したときに、失敗しちゃったね」
といえる感じがいいという言葉は
ある種のリアリティとともに僕の胸に迫るものがあった。