中野光座は以前、映画館だったところ。
JR中野駅から南に歩いて数分すると変な五差路に出る、
そのつきあたりにある。
1階は様々な、商店が入っている雑居スーパー。
横の小さな階段を上がって行くと、光座である。
この建物はいったい何年前のものだろうか?
取り壊されずに残っていること、しかも店舗が入って、
実際に運営されていることが奇跡である。
まるで香港にあった、九龍城址のようだ。
唐十郎原作。唐十郎の作品が最近、
唐組以外のところでも頻繁に取り上げられている。
何が原因なのだろう。
独特な台詞運びと、唐突な展開は見るものを飽きさせない。
しかも、この俳優修行は1970年代末に書かれたものなので、
非情にアナクロニズム感も醸し出している。
成田闘争や機動隊などが随所に登場する。
まだ、学生運動と言われたものがかろうじて残っている時代。
若い人は、古い日本映画でも見るようにこの舞台に向き合うのだろうか?
この舞台に足を運んだのは、昨年11月に、
新宿シアターブラッツで行なわれた、
同じMODEの公演「唐版・風の又三郎」の評判が
ものすごく良かったからなのだ。僕は残念ながら未見。
今回は、その公演の第二弾にあたる。
MODE主宰の松本修は、
近畿大学文芸学部・芸術学科「演劇・芸能」専攻コースで
教鞭をとっている。
そして卒業公演などで、演劇公演を行なうようになった。
この「唐版・俳優修行」も昨年6月に大阪で公演が行なわれている。
唐十郎も昨年まで横浜国立大学で教鞭を執り、
串田和美も日本大学・芸術学部で教鞭を執る。
演劇行為が権威になってしまったということではない。
演劇を教育の一環として、学生に経験してもらうことで、
演劇に興味を持ってもらい、
この世界にかかわるきっかけになる機会が
増えることは嬉しいことである。
大学は自分の好きなことを見つける時間の猶予を持つところでもあるから。
舞台自体はどうだったのだろう?
僕はBプロを、見たのだが、近畿大学出身の、
斉藤圭祐がとてもよく、発声も美しかった。
また注目の、同じく近畿大学出身の山田美佳も
体当たりの演技で頑張っていた。
エネルギーを演技に注ぎ込むことによって
感動が生まれてくるんだなあと思って見ていた。
見たのが楽日の前日ではあったのだが、
舞台全体の流れが時々澱み、時々切れることがあり残念だった。
瞬間的にキラリキラリと光るものがあり、
全身全霊をかけた、若い俳優たちのエネルギーだけで、
「グググッ」と来るものになるんだなあと感じることが
出来ただけでも、中野に来た甲斐があったというものだろう。
改めて、唐組の芝居を初めとした、
唐十郎作の舞台を見にいくのもいいかなと思い始めた。
そして「唐十郎」の舞台はエネルギーの塊を提示する舞台なのかな
とも思った。上手くやる必要なんてないのかも知れない。
それだけに、難しい。