「服従するは我にあり」という副題がついている。
今回は原作、千葉雅子、脚色・演出、福原充則という布陣で新たな挑戦をした。
結果、この試みは成功している。
特に俳優としての千葉雅子が際立つ。
彼女が作・演出している時には、
自分自身まで気持ちが行かず、
自らのことを客観視出来なかったのかもしれない。
それも、これだけ個性的な俳優の面々が揃っている
「猫のホテル」だからこその贅沢な悩みなのかもしれないが。
猫のホテルの全俳優が揃ったオールスター公演だっただけに
見ごたえのある2時間少々となった。
昭和の高度経済背長時代に土方から身を興して
土建屋の社長になり政界に進出していく男の話である。
彼の地元は新潟であり。お屋敷を目白に構えると言えば、
そりゃ田中角栄のことだろう!と思わせるような舞台だった。
そこにヴァイオレンスが挿入される。
男は中村まことが演じる。妻に先立たれた男は愛人を囲う。
当時、現役の高校教師だった女(佐藤真弓)。
中村まことの娘を菅原永二が演じる。
菅原は田中真紀子のことだな、と思いながら見ていた。
役人や政治家への賄賂が横行する建設業界で働く健気な千葉雅子。
彼女の正義感が自滅を招く。
正しいことが生き残る道ではないことが良く分かる。
千葉雅子は金銭を渡す役をいいつけられるが
その行為自身に悩み自殺する。
と同時に、双子の妹が登場する。
彼女は中村まことの議員秘書になり復讐の機会を狙う。
千葉の得意なおどろおどろした情念の強い世界を、
ぐいぐいとひっぱっていく演出で福原が見せてくれる。
このコンビネーションが結果うまくいっているのだ。
本水の使用、おびただしい量の紙吹雪、
そして真っ赤な幕の使用などなど演出の上手さが
千葉の原作をどんどんと引き立てている。
いまの時代にちょっとないようなスタイルの舞台である。
同じく千葉雅子が出ている
「流れ姉妹」とともにこうした独自のスタイルの演劇があっていい。
70年代の東映の映画のような、激しくも懐かしい感じは
千葉の年齢によって実現出来るものでもある。
最後、急激に話が破綻していく様も見ていて面白い。
これを破綻せずに完璧に作り上げていたら
映画の「天国と地獄」や、
また副題にあるような「復讐するは我にあり」のような作品
みたくなっていったのだろうか?
遊んでいいのが演劇で、余り遊ぶと大変なことになるのが
映画というものなのだろうか?
今年を締めくくる派手でばかばかしい舞台を見せていただきました。