山形国際ドキュメンタリー映画祭事務局の藤岡さんから
強力おススメのメールを頂き、久しぶりに東中野に向かった。
大江戸線が出来てからアクセスが便利になった。
中野と新宿の間に挟まれたこの町は独特な雰囲気がある。
早稲田大学も近いので学生たちも暮らしているのだろう。
大盛軒などという、本当に大盛りの食事が食べられる
不思議な食堂もある。
小さな地域ごとにそれぞれのオリジナルなものがあるが故、
「アド街ック天国」などという番組が面白く長く続くゆえんだろう。
中野区で唯一と思われる映画館「ポレポレ東中野」も特異な映画館である。
ドキュメンタリー映画を中心にした上映のラインナップが組まれている。
以前、「バックドロップ・クルディスタン」をここに見に行って以来?
また、吉田喜重監督特集なども行われ
実際に吉田監督や妻の岡田茉莉子が著書などの
サインをしに来てくれるというようなイベントも行われていた。
映画館は地下にあり、1階はこの映画館が経営しているのか
ポレポレカフェという名前の飲食店がある。
1階から地下に降りて行く階段の踊り場には
様々な映画を中心としたチラシの類がぎっしりと置かれている。
で、「ジャライノール」である。
本作は、中国東北部にあるジャライノールという場所を舞台にしている。
ここは炭鉱で栄えた街らしく
石炭を運ぶためだろうか鉄道が縦横無尽に張り巡らされており
ジャライノールがその集積地となっているのだろう。
ここにたくさんの列車がやってくる。
しかも蒸気機関車がいまだに現役で使われているのだ!
世界の中の蒸気機関車の聖地であると映画のチラシに書かれていた。
高原の斜面に幾重にも敷設された線路の上を
何台もの蒸気機関車が走る遠景は圧巻だった。
この蒸気機関車の乗務員として働く老運転士と機関士見習いだろうか?
の若い男性の物語。
映画は春節の日に列車の運転席で鳥の足を醤油で煮たつまみを
食べながらビール?(か何かの酒)を飲んで春節を祝う
二人の姿から始まる。
機関士たちの日常が切り取られる。
共同浴場で煤に汚れたからだを洗い流し、
共同生活をしながら春節の日に巡業に来た、
旅周りの芝居を見るともなく見ているシーンなどが挿入される。
映像が独特で実験的である。
ヨーロッパのアート系の実験映画かと思うようなテイスト。
カラーコレクションが丁寧に行われているのか?
ああいった狙いで撮影したのか?
日中シンクロとも思えるような感じの印象。
太陽が強く差し込んでいるのに暗い。
それが逆に太陽の位置を意識させる。
老運転士は30年間この仕事をし、
ついに退官して実家に戻ることになる。
淡々とした描写で、見るものの気持ちを逆に揺さぶる。
実家に帰る彼のことを受け入れられなくて
延々と実家へ向かう老機関士についてくる機関士見習い。
どうなるのか?と思う。
老機関士の実家から最寄り駅に家族が迎えに来る。
老機関士は見習いに、車に一緒に乗れと声をかける。
が、その時この機関士見習いは初めて気づいたのだろうか?
老機関士にも家族がいたのだ!ということを。
お互いの帽子を投げ合い、機関士見習いは
ジャライノールへと戻っていく。
決してわかりやすい映画ではない、
しかも淡々と進むだからこそ映画館できちんと
向き合って観ることによって感じられることがあったのではないでしょうか?
という藤岡さんの言葉に共感した。