元、同僚の宮本大誠が主演の舞台。
彼は20代の後半に会社を辞めて俳優の道を目指した。
もうすぐ俳優生活20年になるんじゃないか?
新宿のモリエールなどで学生時代の仲間と舞台をやったりもしていて、
彼の出演する舞台は昔から見ている。
安定した中にもさらなる成熟が見えて来た。
それは宮本が夫となり父となったことも大きく影響しているだろう。
彼のキャラクターが活かせる役がこれからもっと増えてくるといいな、と思う。
今回の舞台では、公演前に作・演出の水木英明が舞台に立って挨拶をする。
今回の震災の被害者の方々に対するお見舞いとともに、
安全に公演を続けて行きますという決意の表れだった。
客席は7割くらいの入りだった。
やはり、いつもとは違う。
この日は雨が降るかもしれないということで
外出を控える人も多かったのではないだろうか?
舞台は幕末の房州である。房総半島と言えば今の千葉の話。
それも下総の話であり館山などの地名が出て来たので、そのあたりなんだろう。
NHKで「新八犬伝」という人形劇があった。
辻村ジュサブローが人形のデザインをするという画期的なもの。
小学生時代に話題になった。
「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」
という言葉もこのとき初めて覚えた。
1973年から75年にかけて放送された。
その「南総里見八犬伝」のエピソードがまぶされつつ、
幕末の房州にある変化が起きる。
「劇団新☆感線」の舞台にも似た、剣劇もあり、恋もあり
そして子弟愛、兄弟愛も描かれた娯楽大作である。
房州の田舎の村には、タイガーマスク(伊達直人)の
ちびっこハウスみたいなものがあった。
そこは、みなしごたちが育てられている共同体のような場所。
坊さんが慈善活動として行っている。
この村では、5年に一度に大きな祭りがおこなわれる。
みんなで太鼓を叩く。
その祭りの準備からこの舞台は始まる。
小助(戸谷公人)は太鼓の練習をしながら
兄の大八(宮本大誠)が江戸の剣術修行から帰ってくるのを楽しみに待っている。
大八を待つ松(入江加奈子)。
飯田圭織(モーニング娘のオリジナルメンバー)が菊の役で出演している。
そこに江戸から大八が帰ってくる。
さらには大八を頼って江戸で剣術修行をともにやった
鶴岡清太郎(津田英佑)がこの村を訪ねてくる。
そこから村は変わって行く。
小助が純粋なるものとして描かれる。
戦いをするのは意味のないことである、と。
しかし、仲間や同胞が悲惨な目に遭うのを間近にして
小助は剣を取る、悲劇の始まりである。
戦うことの意味は一体どこにあるのか?
仲間を守るためか?
龍馬の言葉が引用される。
「たとえ夢がかなわなくともそこへ向かって行く途上で死ね。」と。
カーテンコールの水木の舞台挨拶が印象的だった。
「満員のお客さんでの公演にしたかった!」と。
この舞台の初日が開いたのが、
震災から4日後の3月15日だった。
公演チラシには、このように書かれていた
「戦わなければ!…俺たちの明日も存在しない!」