本書を読んでみようと思ったきっかけは、
2011年12月10日付の朝日新聞「be」の
フロントランナーのページに西村佳哲の記事が
掲載されたのがきっかけだった。
「働き方研究家」という肩書で取り上げられていて
彼の学生時代から現在までの経緯が簡単に記されていた。
現在47歳。
「バブル期に、なじめなかったアウトロー」と
若き出版社、ミシマ社のミシマさんは語る。
鹿島建設に入社したが30歳で退社。
39歳で書いた最初の本が「自分の仕事を作る」というもの。
本書は「全国教育系ワークショップフォーラム」の
実行委員長をやったときに、
その過程で出会った人たちへインタビューしたものを
ベースにワークショップとは?
そしてワークショップにおけるファシリテーターの役割とは?
ということについて様々な人の言葉と事例をもとに
紹介されたものである。
そのときに重要なのは、ワークショップは
その場とそこにいる人たちによってプロセスが変化してくるということ。
そのプロセスを参加者に応じてうまくアダプテーションしていくのが
上手なファシリテーターの役目だと説く。
結論や方向性を決めずそちらの方向に誘導させるようなことはやらない。
あくまで方向を決定づけるのは
そこに居合わせた参加者であると説かれている。
こうしたことは、
マスメディアや広告がもっとも苦手とする事なのかもしれない。
結論があいまいな広告は、広告主が二の足を踏むだろう。
時間が限定されているテレビ番組などもそう。
終了時間が限定されていないと言われている
「朝まで生テレビ」ですら、朝になったら終了しなければならない。
そして司会の田原総一郎は参加者たちの議論の流れに任せることなく
どんどんと番組を誘導していく。
そういう意味で田原さんなどがおやりになっていることは
ファシリテーターとは対極にあるのだろう。
あの番組は役割が違うのだ。
さらに余談だが、
先日NHKで「ニッポンの再生」と題した討論番組があった。
12月には「増税」を取り上げ
1月は「リーダー」について取り上げられた。
とても面白く興味深く見た。
そして、こうした討論番組はたくさん作られ見られるべきである。
現在の多様性がそこから見えてくる。
もとい!
本書では特に、
3章の「人の見え方」について西村が書いているところが興味深かった。
ファシリテーターには「わたし」=「i」が必要であると。
わたしの基準があってそこから議論や作業が進んで行く。
教育(education)には「引き出す」という意味がある。
上手く引き出せるのが優れた教育者であり、ファシリテーターである。
ワークショップの「早い段階で無数小さな失敗を重ねることの価値」
は重要である。とか、「
気づき」は、本人自ら気づくところに価値と尊さがあると思う。
もちろん、ある結論にたどりつかなくても構わない、
そのことについて考えて身体を使って経験したことは
何らかの貴重なこやしになる筈だ。
こうした示唆に満ちた言葉がたくさん書かれている。