正統的なチェーホフの舞台だった。
「三人姉妹」のエンディングはウッディアレンの映画
「インテリア」にも通じるものがあると
50歳になって初めて気が付いた。
ウッディアレンもチェーホフ劇が好きなのか?
どうしようもない行き詰まりの中でもがく
三人の姉妹の三人三様が描かれる。
場所はモスクワから遠く離れた田舎町である。
「斜陽」とでも言えばいいのか?
かつて栄華を誇っていた貴族階級の家族も
ロシア革命などの環境の変化を受けて没落していく。
そこに向き合いながらギリギリの矜持を守って生きている。
その姿が痛々しくも心の中に沁み入ってくる。
そんな舞台だった。
プロセニアムの中は何本ものオーガンジーの布が吊るされている。
室内のシーンだとそれは柱に見え、
屋外だと白樺の林などに見えてくる。
幕場によって小道具や衝立が加えられ
また、引き算されいくつかの情景を作っていく。
演出も演技も正当でオーソドックスである。
日本語訳はこなれていて分かりやすい。
今回の公演はWキャスト。
僕の見た公演はイリーナ役が上田桃子。
彼女は小柄で、とてもいい女優さんだ。
もう一人のイリーナ役が荘田由紀。
荘田はこの回では旅の音楽師の役をやっており、
その歌声が素晴らしい!
また、宮廷でダンスをするシーンがある。
上田のダンスがいい。
振り付けはモモンガコンプレックスの白神ももこ。
文学座はこうしたところに新しい才能を導入し
現代に合わせて変化しようとしている。
ピアノや音の鳴る独楽などが登場した演出は
音が効果的なものとなった。
チェーホフの芝居も劇的なことは舞台の外で起きている。
これは平田オリザの言う演劇論と同じである。
舞台の外で起きていることを想像しながら、
登場人物の感情に想いを馳せる。
そのために適切な舞台の大きさというのがある。
これが、文学座のアトリエでロングラン公演されたら、
さらにさらに素晴らしいものになるような気がする。
演劇とはその非効率的なところに価値がある。
それを見た人は長く深く演劇が好きになる。
そのために必要なのは文化庁を初めとする公共機関との連携なのだろうか?
橋本大阪市長が文楽の振興助成金についての発言をしている。
大阪の文楽はいったいどうなっていくのか?
と同時に三谷幸喜が文楽の脚本を書くらしい。
会場はパルコ劇場!
大阪では文楽劇場で行われるのか?
学生時代にNさんに連れていってもらった国立文楽劇場での、
文楽体験は30年経ったいまでも心の中に深く残っている。
舞台芸術にはそういうところがある。
文学座創立75周年記念公演。19日まで。