下北沢の街をふらふら歩いていたら、
ああ、トラッシュマスターズって今やっているんだ!
と本多劇場グループの看板を見て思った。
「当日券あり」の文字。
日曜日の夜公演。
1時間前に劇場に行って見ると何人かがすでに並んでいた。
実は、トラッシュマスターズという
劇団の名前を覚えたのは今年になってからだった。
昨年9月に、笹塚ファクトリーで上演された
「背水の孤島」という舞台が、
昨年の3・11を真正面から受け止め描いた演劇として
注目を浴びていた。
ネットなどで噂が拡がったのだが結局見に行くことが出来なかった。
その後、この作品と作・演出の中津留章仁が
数々の演劇賞を受賞した。
読売演劇大賞、紀伊国屋演劇賞、千田是也賞などなど。
「背水の孤島」は8月に再演が決まった。
そんな、トラッシュマスターズを見てみたいと思い、
並んでいる時に3時間超えるのに休憩なしと聞いて一瞬ひるんだが、
観劇が終わってみると、
ええ?もう終わりなのおおお?
とあっというまの3時間半弱の舞台だった。
扱っているテーマは医療の現場とそれにまつわる製薬会社、
厚生労働省などなどの関係者を描いたもの。時代は近未来?
中津留の脚本は力強い。
これだけ力強い脚本をかける人はそうそういないのではないか?
例えがあれかも知れないが、
見ていて山崎豊子の原作の映画やドラマなどのことを思い出す。
中津留は、社会的な問題を真正面から扱っている。
甲状腺を初めとするリンパ系の癌治療における
新薬の開発とそれにまつわる医師や製薬会社の様々な人が登場する。
国策としてもこの新薬の発売を急がねばならない理由が語られる。
本当にこれからこうしたことが起こるんじゃないか?と思わせられる。
舞台は緊張感に満ちており、
その緊張の糸が3時間以上持続する。
ものすごい迫力。
舞台は大きく二幕に分かれる。
病院の中と、製薬会社である。
若い青年、司君(阿部薫)が外部の視点から
業界の矛盾したところを大声で語る。
そんなに大声で正論を言わなくてもと最初思うのだが、
この青年はこういう性格なんだな、
と思って来るとそれも受け入れられる。
そこの部分さえ受け入れられれば
本作は一級のエンターテイメントであり
現在の問題を描いた衝撃作でもある。
映画やドラマのプロデューサーならば
これを映像化してみたいと思うのではないか?
堤幸彦監督にメガホンを取ってもらうのはいかがだろう?
というのは、パンフレットに
中津留さんと堤さんの対談が掲載されていたからなのだが。
余談だが、本公演は製本されたパンフレットが無料で配布される。
セットの豪華さといい、ここまでやってこの値段で大丈夫なのか?
トラッシュマスターズ!
看護士役の林田麻里が魅力的だった。
硬派で重苦しいテーマが好きな人必見の演劇です。
3時間強は長くない!29日まで。